2)上歯痛に対する客主人移動穴
体位:痛む歯を上にした側臥位。口を閉めさせておく。響いたら、口を閉じたまま「ウーッ」と発声させるように指示しておく。
取穴:耳前頬骨弓の上縁を指で触診しつつ前方へ指を移動する。側頭動脈と頬骨弓との分かれ目より、おおよそ1.5寸で一筋越せば指頭に陥没の部を触れるところ。
刺針:寸3の#2~#3にて、針を頬骨弓をくぐらせるようにし、針柄をほとんど皮膚に接触させるくらいにして、ゆっくりと刺入する。患者が痛む歯に針の響きのあるのを度とする。「ウーッ」と患者が言えば抜針。抜針後はただちに指頭で刺針部位を圧迫
(青あざを予防)。もし出血斑ができたら、マグレインを貼ると退色が早くなる。
3)下歯痛に対する裏大迎
4)歯痛の遠隔治療
経絡的には、上歯は胃経、下歯は大腸経が支配する。それぞれ経絡上の代表穴を取穴する。
経絡治療では特に胃経滎穴である内庭が用いられる。
上歯痛:胃経の経穴を使用。足三里、陥谷、内庭。
下歯痛:大腸経経穴を使用。合谷、手三里、曲池。
従来から、歯痛と肩凝りの相関が指摘されている。歯痛時には肩凝りを感じることが多いが、歯の悪い者が肩凝りになると歯痛が生じやすい。つまり肩凝りは歯痛の増悪因子となる。
このような患者に対し、肩凝りに対する鍼灸治療を行うと、疼痛閾値が上がるためか歯痛も軽減することが多い。
2.歯肉痛(歯肉炎と歯周炎)の鍼灸治療
1)適応性について
歯肉炎に対して鍼灸治療は有効である。それ以上に進行して歯肉炎(=歯槽膿漏)になると鍼灸不適である。ただし歯槽膿漏の炎症型の初期のもの、すなわち膿瘍をつくりはじめた状態
までであれば針治療によってこれを治癒せしめることができるとする者もいる。
2)項筋緊張を緩和
歯肉炎を、歯肉部の血流増加と捉えれば、治療方針は口内炎や血管性顔面痛と同様に行えばよい。
3)局所治療
寸3の1番針を使用。症状ある歯肉部に刺入。単刺または雀啄により患部に軽く響かせた後、置針。置針したままで軽く咬合運動を行なわせる。この運動により患部に響きを感じるが、この針響は運動開始時には強く、やがて弱まり、ついには感じなくなる。感じなくなった時点で抜針する。この方法は歯痛にも有効。
置針している時に、針響が継続して生じている時は運動針は必要なく、針響が消失するまで、そのまま置針する。
歯槽膿漏には女膝穴。毎日10壮ずつ施灸すると炎症が治まってくる。
女膝は、足の踵骨上、赤白肉の際にとる。歯槽膿漏の特効穴としての灸治が知られている(効果不明)。せんねん灸でもよい。