4.ドライ・アイ
1)涙の産生と排出
涙は涙腺でつくられ、排泄溝を通って眼球表面に流出する。その10 %は眼球表面から蒸発
し、90 %は涙路(上下の涙点→上下の涙小管→涙嚢→鼻涙管)から鼻腔へと排泄される。
涙の役割は、①眼表面を乾燥から守る、②角膜への酸素と栄養を補給、③目の表面にある汚
れや、細菌を洗い流す、などである。
2)涙液膜の三層構造
①外側:薄い油膜のような「油層」
睫毛の生え際にあるマイボーム腺より分泌。瞬きで上下の瞼がくっついて離れる時に涙の
表面に油膜をはる。涙の水分蒸発防止の役割。
②中間:栄養分と水分をたくさん含んだ「水層」
涙の主成分。主涙腺で産生され、瞬きによって眼の表面に運ばれる。瞬きには、角膜(三
叉神経第1枝支配)を刺激し、涙腺からの涙の分泌を促す作用もある。汚れた涙を涙点(目
頭にある涙の排出口)へ運ぶのも、瞬きの働きである
③表面:タンパク質でできた粘りのある「ムチン層」
結膜にあるゴブレット細胞から主に分泌。水層を眼の表面にとどまらせる接着剤のような
役割。目やにの主成分は、ムチンである。
3)ドライアイの原因
眼精疲労を訴える者の6割はドライアイである。ドライアイはその原因によって大きく二つのタイプに分けられる
①涙液蒸散型
涙の蒸発量が増える。軽度のドライアイに多い。マイボーム腺の分泌量低下であり、涙分
泌量は正常。分泌減少する者は高齢者に多い。マイボーム腺が分泌減少する原因は、油の性
状が変化して固まりやすくなり、ときには腺が詰まることもある。
この改善の目的で行う眼瞼マッサージは、油が固まっていると効果がない。固まった油を
溶かすには、40 ℃程度のおしぼり(または遠赤外線。赤外線ではまぶしすぎる。マイクロウ
ェーブは禁忌)で、眼瞼を5分間以上温める方法がある。
②涙液減少型→シェーグレン症候群が代表。
4)ドライアイの症状
「眼が乾く」と感じる人は意外に少なく、はじめは、なんとなく目の違和感、目の疲労感
として自覚症状が出現する。めやに、流涙、ゴロゴロ感、乾燥感、かゆみ、視界がかすむ、
重たい感じ、まぶしい感じ、不快感、充血なども出る。
5.動眼神経麻痺
1)原疾患
圧迫、外傷、糖尿病。最も重大なのは脳腫瘍や脳動脈瘤により、第3脳神経である動眼神経
が圧迫され、動眼神経機能(運動と副交感)が麻痺する。
2)症状
代表症状は、対光反射消失・散瞳・眼瞼下垂・眼球運動異常
語呂:ドカン(動眼神経麻痺)と光(対光反射消失)が散(散瞳)って垂れ(眼瞼下垂)
①運動神経麻痺
a.眼球運動麻痺:上・下直筋、内直筋、下斜筋麻痺
b.輻輳反射消失:輻輳とは、近見時に内直筋の働きにより、両側眼球が内転(寄り目)す
る生理現象である。動眼神経麻痺では、両眼の内直筋が麻痺するので、輻輳反射も消
失する。
c.眼瞼下垂:上眼瞼筋麻痺により、上まぶたを開けづらくなる