2.バレリュー症候群症候群の治療
頸椎捻挫の治療に加えて、頸部交感神経刺激を併用する。頸部交感神経刺激には、座位にて
肩中兪深刺(C7棘突起下に大椎をとり、その外方2寸。気胸に注意)を用いることが多い。
なおペインクリニック科では、交感神経支配を緩め、相対的に副交感神経優位にさせることで
頭・顔面・頸部の血流増加による治癒促進効果を期待する目的で星状神経節ブロックが多用され
る。この場合、ホルネル徴候(3大徴候は縮瞳・眼球後退・眼裂狭小)が出現する。
針治療でも星状神経節刺針を行うこともであるが、患者に負担がかかり、技術的に高難度になる。
3.頸部神経根症の治療
後枝前枝
C1~C4 C1~C4 頸神経叢刺針
背部一行刺針=天窓
C5~Th1 C5~Th1 腕神経叢刺針
背部一行刺針前方アプローチ=天鼎
後方アプローチ=肩中兪
1)治療の基本
頸部神経根症の治療は、安静により神経根部の炎症や局所浮腫の改善を第一とする。
器質的変化が進行し、2週間程度の安静でも症状が軽減しない場合には手術の対象になる。
針灸は、症状改善を目的として、①障害神経に対する直接施術、②周囲筋や症状部に対す
る対症治療の2点となる。針灸すると神経の過敏性がとれ、保護スパズムもとれるので、症
状は改善することが多いのだが、患者は「治った」と思って安静を中止しがちになるため、
結局は治癒を遅らせる結果になりかねない。
2)治療法
①C1~C4神経根刺針
頚神経叢の出る部。直接的にC1~C4神経根に刺激を与える方法もあるが、頸神経叢
が浅層に出てくる部である天窓を刺激することが多い。なおC1~C4神経根は障害をき
たすことは少ない。
天窓刺針
位置:小腸経。喉頭隆起の高さ(C4棘突起の高さ)で、胸鎖乳突筋の後縁。
刺針:直刺し、電撃様針響を後頭部に与え、また肩井部僧帽筋の攣縮を与える。
併用する運動法:側臥位にて天窓に刺針した状態で、患側の腕を外転45度に保ち、手指の方向に
引っぱり、20秒静止。引っぱる力は徐々に強くし、最終的には患者の頭がマクラから浮くまでとする。
②C5~C8神経根刺針
上肢症状があればC5~C8頸神経根刺針を行う。実際的には腕神経叢刺激を目的とし
て、頸の前方からは天鼎刺針、後方からは肩中兪刺針を行う。肩中兪刺針は、腕神経叢を
間接的に刺激している。
天鼎
中国式位置:大腸経。甲状軟骨と胸
鎖関節の中点の高さで、胸鎖乳突
筋後縁から下方1寸(本稿)
日本式位置:
扶突の後下方、胸鎖乳突筋の後縁。
刺針:直刺して腕神経叢を直接刺激
する。触電感が上肢に放散し、肩
甲骨の反射的挙上運動をみる。
肩中兪
位置:小腸経。座位にしてC7Th1
棘突起間に大椎をとり、その外方
2寸。(実際には気胸を避けるた
めに外方1寸程度とする)
刺針:寸6#5~#8程度の針で、
直刺。深刺して雀啄。