3.軽度の頸部筋々膜症(寝違え)の治療
ある一方向または二方向に頸を回そうと
すると、ひどく痛むという程度の軽症の場
合、部分的な筋の痙縮を考える。睡眠中の腓腹筋のツレは、掛け布団による長時間の足関節の背
屈の強制により、腓腹筋の持続的弛緩が原因とする説があるが、寝違えもこれと同様の機序で反
射的な筋の痙縮が生じた状態だろうと筆者は推測している。
針灸治療は、以下に示すように、反応点に対する運動針が有効となる。
1)短縮を生じている筋の治療の基本
短縮している筋は、そのままの状態では、部位感の少ない鈍痛を生じているのが普通で、
この状態で施術しても効果は乏しい。短縮筋を伸張させた状態(つまり痛む姿勢)にさせ、
局在性のはっきりした痛みにさせてから、患者自身に最も痛む部を指で触らせる。その姿勢
のまま、示された部に刺針することで筋膜痛が即座に改善できることが多い。
それでもあまり改善しない場合には、刺針部した部の近くに新たな疼痛部位が発見できる
のが普通で、「今度はどこが最も痛むか」を問い、同様の方法で刺針する。
2)伸張痛を生じている筋の治療の基本
患者の訴えは、部位感の明瞭な鋭い痛みなので、患者の指し示す最大疼痛部に刺針する。
3)運動針法
痛む姿勢をさせることができないか、痛む姿勢というものがよく分からない場合には、圧痛
点を目安に刺針し、刺針したままの状態で該当部位の自動運動を実施させるとよい。これを運
動針とよぶ。運動針では刺針部の筋を動かす関係上、折針の危険を伴う。これを避けるため、
やや太い針(#4以上)を用い、また深刺を避けるなどの注意が必要である。
4)運動神経の刺激
筋緊張は、この筋を支配している神経の運動線維の興奮でもあるので、この神経が出発す
る神経叢や絞扼されやすい部を刺激することも行われる。天窓穴は頸神経叢の代表刺激点
であり、天鼎は腕神経叢の代表刺激点である
5)リズミックスタビリゼイション(律動的安定化)
患者の動作と逆方向に検者が力を加え、見かけ上患者・検者とも動いていない状態にする運
動訓練法。神経筋促通法である。リハ訓練で用いられる。関節運動を伴わず、筋収縮力向上を
目的としている。
① 首を両側に傾けて、どちらが痛いか確認する
② 頭を中心(垂直)に戻す
③ もし首の左が痛んだら、左手の指を左のこめかみに当てる
(右側が痛ければ、その反対に右手の指を右のこめかみに)
④ 指と頭で押し合う。そのとき双方の押し合う力は均衡に!
⑤ そのまま4秒ほど静止
⑥ そして、首の力をゆっくり抜く
⑦ 1~6の手順を4セット繰り返す