緊張性頭痛
1)緊張性頭痛の概念 緊張型頭痛は、1988 年までは筋収縮性頭痛と呼ばれていた。頭痛の7~8割を占める。重 く締めつけられる感じの頭痛で、頭重とも表現される。発症は不明瞭で、梅雨時の雨のように 何日も続く。両側性の頭痛。頭痛薬無効(薬が効いている間だけは軽快)。 精神緊張、抑鬱状態、頭頸部外傷等によるストレス→頭部の筋肉の持続的収縮→筋の循環障 害→疼痛物質の発生→さらに筋収縮の惹起という悪循環。後頸部筋と頭蓋周囲筋の緊張が強い。 2)後頸部筋の緊張の病態 症状:頭に重石を載せられているような頭痛 実際には、側頭部にも放散痛が生ずることが多い。 原因:大後頭神経(C2後枝)の運動枝支配である深頸筋の緊張 C2C3頸神経後枝運動枝支配の僧帽筋・頭板状筋・頭半棘筋の緊張 3)頭蓋周囲筋の緊張の病態 症状:被帽感(きつい帽子をかぶったような感じ) 原因:後頭前頭筋(顔面神経支配)、耳介筋(顔 面神経支配)、側頭頭頂筋(顔面支配)、側頭 筋(三叉神経支配の咀嚼筋)の緊張による。 頭頂部は帽状腱膜で覆われ筋構造はないが、 頭蓋周囲には筋がハチマキ状に取り囲む。 固有名称のついている頸部の神経 構成神経運動枝知覚枝
後頭下神経C1後枝後頭下筋コリ
大後頭神経C2後枝深頸筋コリ後頭~頭頂皮膚痛
小後頭神経C2C3前枝× 後頭~側頭皮膚痛
頚性頭痛とは 頚椎または頚部筋に異常があることで生ずる頭痛を頚性頭痛とよぶ。頭痛で最も高頻度なのは緊張性頭 痛(筋収縮性頭痛)だとされるが、その中の一定割合は頚性頭痛だろうという疑いがもたれている。 頚性頭痛の痛みは頭部の各所におこることがあり、眼窩後部も痛むことがある。しかし痛みが後頭部、 後頭下部、頚部から始まった場合、頚性頭痛であることを強く示唆する。痛みの性質は、緊張性頭痛のよ うな、ついバンドで締め付けられるような場合もあれば、偏頭痛のようなズキンズキンと脈うつ性状のこ ともある。
片頭痛
1)片頭痛の分類
血管性片頭痛 典型片頭痛(狭義) 普通片頭痛 群発性頭痛
血管性頭痛の種類 前駆症状 拍動性 頭痛持続時間 痛みの強さ 性別
典型片頭痛 (+) (+) 短 強い 女性に多い
普通型片頭痛 (-) (-)~(+) 長
群発型片頭痛 (-) (-) 種々 激烈に強い 男性に多い
太く短い→典型、細く長い→普通型
2)片頭痛の痛みかた 夕立のように発作的に起こる頭痛で、月2回平均(週1回~年数回まで)、発作的に繰り 返し起こる。1回の発作持続時間は、4時間~1日間くらい。頭の片側のこめかみから眼の あたりに起こる。ズキンズキンとした頭痛で、吐気を伴う。女性に多い。 マッサージや入浴、体操はかえって頭痛を悪化させる。これが緊張性頭痛と異なる点。
3)片頭痛の病態生理 ①血管説(古典的) 無症状 ↓ ストレスなどで血小板からセロトニン(血管 収縮作用)が血中に過剰分泌 前兆期(5~15分) 血管収縮→脳虚血(視野欠損、閃輝暗点) ↓ セロトニンは代謝されて急激に減少 拍動性頭痛期(数時間~1日) 反動で血管拡張。脈拍に一致した拍動性頭痛 血管透過性亢進とともに、痛み物質である プロスタグランジンやブラジキニンが放出。 ↓ 後期頭痛(数時間) 血管浮腫となり、血管壁の厚みが増すと次第に拍 動消失し、持続性の頭重感(頭頸筋の収縮→緊張性頭痛)となる。 閃輝暗点:視界にチカチカした光(「閃輝」という)が現れ、これが拡大していくにつれ、元のところは 見えにくくなる現象。血管収縮に伴う脳の虚血による。 非典型片頭痛は、血管収縮の程度が弱いので、前駆症状もない。