②三叉神経血管説
「血管説」では、血管収縮期にすでに頭痛が始まっている事実を説明できなかった。 現在では血管反応性に三叉神経の関与を含めた「三叉神経血管説」が最も有力視されている。 この説の前提となった発見は、三叉神経節由来の無髄神経線維が硬膜の血管に分布している という点にある。 a.. 求心性刺激 何らかのきっかけ(ストレスからの開放・生理・人ごみ・まぶしい光・アルコールなど) により、脳硬膜内面にある中硬膜動脈などにまとわりついている三叉神経第1枝が刺激を 受け、痛覚を三叉神経脊髄路→視床→大脳皮質へと伝達することで痛みを感じる。 b. 遠心性刺激 脳硬膜血管周囲に存在する三叉神経の神経終末から、痛み物質のカルシトニン遺伝子関 連ペプチドを血管に放出。これにより血管の拡張と炎症がおこり、頭痛が起こ る。 4)頭痛以外の片頭痛症状 ①片頭痛の頭痛症状自体は、年を重ねると軽くなることが多い。しかし脳の過敏状態は存在し ており、頭痛に代わって、不眠・めまい・耳鳴り(頭鳴)などが主訴になることがある。 ②生理痛時に生ずる頭痛は、生理痛由来ではなく、片頭痛であることが分かってきた。生理時 には女性ホルモンのエストロゲンが体内から減少し脳にも影響を与え、神経伝達物質である セロトニンが減少することが原因となる。 5)片頭痛の現代医学的治療 従来:酒石エルゴタミン製剤の内服。 前兆期に服用しないと効かない。 新薬:平成12年から、トリプタン製剤が、我が国でも認可になった。本剤は盛期の片頭痛も抑えること ができる初の薬で、有効率6~8割である。 血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血管に降り注い で、血管の拡張と炎症が起こっている。シャワーには1D という鍵穴が ある。トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出を止める。 血管には1B という鍵穴がある。トリプタンはこの鍵穴に作用して、 血管を収縮させる血管と神経に作用する。
群発性頭痛
1)病態 頭蓋内の動脈(内頸動脈が頭蓋に入る部分)で血管拡張により、交感神経を障害(抑制) すると同時に、周囲の炎症を惹起し副交感神経系を刺激し、群発頭痛特有の自律神経症状 (目の充血や、鼻閉、鼻水)を呈する。 片頭痛と同じく、血管と血管周囲の三叉神経が関与しているようだが、詳細は不明。 2)症状 一度起こると、群発性地震のように、1~2ヶ月間、 連日のように群発する頭痛。1回発作は1時間程度。 非発作時には頭痛はない。片側の眼の奥に出現するえ ぐられるような激しい頭痛で、じっとしていられない (片頭痛は痛みのためじっとしている)。 30 代~ 40 代の男性に多い。(片頭痛は女性に多い) 同側のホルネル症候群、流涙、結膜充血、鼻汁などの 自律神経症状を合併する。 睡眠中に起こりやすい。悪心嘔吐なし(片頭痛では悪心嘔吐あり)。20 ~ 30 歳代の男性に 多い(片頭痛は女性に多い)。発生頻度は一般片頭痛の1/100。 3)治療:トリプタン製剤が有効。群発性頭痛特有の治療として20 分間の酸素吸入が有効 (血管収縮作用)だが、高額になる。