1)片頭痛の分類
血管性片頭痛典型片頭痛classic migraine (狭義) 普通片頭痛common migraine: 群発性頭痛cluster headache 血管性頭痛の種類前駆症状拍動性頭痛持続時間痛みの強さ性別 典型片頭痛(+) (+) 短 強い女性に多い 普通型片頭痛(-) (-)~(+) 長 群発型片頭痛(-) (-) 種々激烈に強い男性に多い
太く短い→典型、細く長い→普通型
2)片頭痛の痛みかた
夕立のように発作的に起こる頭痛で、月2回平均(週1回~年数回まで)、発作的に繰り 返し起こる。1回の発作持続時間は、4時間~1日間くらい。頭の片側のこめかみから眼の あたりに起こる。ズキンズキンとした頭痛で、吐気を伴う。女性に多い。 マッサージや入浴、体操はかえって頭痛を悪化させる。これが緊張性頭痛と異なる点
3)片頭痛の病態生理
①血管説(古典的) 無症状 ↓ ストレスなどで血小板からセロトニン(血管 収縮作用)が血中に過剰分泌 前兆期(5~15分) 血管収縮→脳虚血(視野欠損、閃輝暗点) ↓ セロトニンは代謝されて急激に減少 拍動性頭痛期(数時間~1日) 反動で血管拡張。脈拍に一致した拍動性頭痛 血管透過性亢進とともに、痛み物質である プロスタグランジンやブラジキニンが放出。 ↓ 後期頭痛(数時間) 血管浮腫となり、血管壁の厚みが増すと次第に拍 動消失し、持続性の頭重感(頭頸筋の収縮→緊張性頭痛)となる
閃輝暗点:視界にチカチカした光(「閃輝」という)が現れ、これが拡大していくにつれ、元のところは 見えにくくなる現象。血管収縮に伴う脳の虚血による。
非典型片頭痛は、血管収縮の程度が弱いので、前駆症状もない
②三叉神経血管説 上記の「血管説」では、血管収縮期にすでに頭痛が始まっている事実を説明できなかった。 現在では血管反応性に三叉神経の関与を含めた「三叉神経血管説」が最も有力視されている。 この説の前提となった発見は、三叉神経節由来の無髄神経線維が硬膜の血管に分布している という点にある。
a.. 求心性刺激 何らかのきっかけ(ストレスからの開放・生理・人ごみ・まぶしい光・アルコールなど) により、脳硬膜内面にある中硬膜動脈などにまとわりついている三叉神経第1枝が刺激を 受け、痛覚を三叉神経脊髄路→視床→大脳皮質へと伝達することで痛みを感じる
b. 遠心性刺激 脳硬膜血管周囲に存在する三叉神経の神経終末から、痛み物質のカルシトニン遺伝子関 連ペプチド(CGRP)を血管に放出。これにより血管の拡張と炎症がおこり、頭痛が起こ る
4)頭痛以外の片頭痛症状 ①片頭痛の頭痛症状自体は、年を重ねると軽くなることが多い。しかし脳の過敏状態は存在し ており、頭痛に代わって、不眠・めまい・耳鳴り(頭鳴)などが主訴になることがある。 ②生理痛時に生ずる頭痛は、生理痛由来ではなく、片頭痛であることが分かってきた。生理時 には女性ホルモンのエストロゲンが体内から減少し脳にも影響を与え、神経伝達物質である セロトニンが減少することが原因となる
5)片頭痛の現代医学的治療 従来:酒石エルゴタミン製剤(製品名カフェルゴットなど)の内服。 前兆期に服用しないと効かない。 新薬:平成12年から、トリプタン製剤(商品名イミグラン、ゾーミッグ、レルパックスな ど)が、我が国でも認可になった。本剤は盛期の片頭痛も抑えること ができる初の薬で、有効率6~8割である
血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血管に降り注い で、血管の拡張と炎症が起こっている。シャワーには1D という鍵穴が ある。トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出を止める。 血管には1B という鍵穴がある。トリプタンはこの鍵穴に作用して、 血管を収縮させる血管と神経に作用する。1錠1000 円前後と高価