4)小児喘息について
思春期までには治癒する者が多いとされる。この理由は、治りやすい類似の呼吸
器疾患(喘息様気管支炎など)や、喘息に似た一過性の自律神経失調症を含めて、
小児喘息と診断されていた実態による。小児喘息(ほとんどがアトピー性)は必ず
しも治癒しやすいものではない。
3.気管支喘息の鍼灸治療
1)治療の適否と治療目標
①気道狭窄はアレルギー反応や感染が直接原因であるが、針灸は気道の炎症や自律神
経に対する治療効果が期待できる。ただしこの作用機序は喘息のメカニズムの一部
分に働きかけているにすぎない。効果あることも、ないこともある。
②鍼灸は軽症発作における呼吸困難症状を軽減することがある程度可能だが、中等度
以上の喘息発作では針灸の効果は不確実である。つまり本当に困った発作の場合、
鍼灸は薬物療法に及ばない。
非発作時は針灸適応で、次に起こる発作を起こりにくくしたり、発作を軽くする
ことが治療目標となる。
2)交感神経優位化を目標とする治療-発作改善のために
①理論
喘息発作が、アレルギー反応の結果として気管支平滑筋に分布する迷走神経が緊
張し、気管支平滑筋が病的に緊張し、また気管支粘膜の腫脹が起きている状態であ
るとするなら、交感神経優位に転じてやることが発作の改善に効果ある。
②刺激の与えかたの工夫-座位にての強刺激、短時間治療
気管支喘息は、気管支の慢性炎症がベースになっているから、炎症を改善させる
ことで過敏性を減らすようにすればよい。これは慢性気管支炎と同一の針灸治療と
なるが、気管支炎は強めの刺激でよいのに対し、喘息治療はリバウンド(交感神経
優位にしたことにより、数時間後には副交感神経優位に転じる)による発作誘発を
予防するため、弱刺激がよい。しかし単なる弱刺激では治療効果が引き出せないと
いうジレンマがある。座位にての少数穴強刺激治療がよく、針よりは灸治
療がよく、針治療ならば強刺激で浅刺の速刺速抜治療を行うのがよい。
③座位で大椎穴を中心とする脊椎傍点灸、座位にての大椎穴を中心とする脊椎傍点への刺激を最も多用。薄い痰を多量に分泌するタイプでは、前胸部の第1~3
肋間で、第1側線、第2側線、第3側線の圧痛や撮痛が特徴的であり、背部ではT4~T6
の第1第2側線の圧痛が特徴的であり、これらの反応点への施灸が効果ある。
肺の交感神経デルマトームはC7~T6で、その中心はT1~T3なので、この内部にあ
る気管支も同等だとみなされている。
その奏功理由として、肺血管はT1~T5に属する交感神経によって支配されているの
で、施灸刺激が肺血管に対して反射的収縮をおこすためではないか、と考察している。
気管支喘息は、気管支の慢性炎症がベースになっているから、炎症を改善させる
ことで過敏性を減らすようにすればよい。これは慢性気管支炎と同一の針灸治療と
なるが、気管支炎は強めの刺激でよいのに対し、喘息治療はリバウンドによる発作
誘発を予防するため、弱刺激に撤する必要がある。
気管支喘息発作時には、熱い湯に両手を漬けると症状が緩和するという。これも交感神経緊
張状態をつくるので有効となるのであろう。
④治喘への刺針パルス
治喘穴あたりの最硬結点を探って、骨面に至るまで鍼を通す。脊柱両側のこわばりを一気
に取るため、脊柱棘突起間刺針を加え、パルスと遠赤外線を併用して筋肉の緊張を取る。
この針治療の特徴は、置針して10分もすると効果が現れることである。途中で咳き込んで
も、構わずに治療を続ける。そうすると気管が開いて来て、呼吸が楽になるのが実感できる。
胸郭の圧迫感も消える。