2)蠕動状況
蠕動亢進では腹痛(+)、蠕動正常ないし低下では腹痛(-)である。蠕動運動亢進時、それが抽送運動主体ならば下痢となり、分節(攪拌)運動であれば、緊張性便秘になる。蠕動運動は、近位結腸は迷走神経、遠位結腸以下は骨盤神経により促進され、腰部交感神経により抑制されるので、蠕動運動を止めるには、腰神経叢(L1~L3)への直接刺激、または腰神経叢から伸びる枝を刺激する。その代表穴として、大腿神経支配である血海や梁丘が知られる。大腿外側皮神経上では足の陽関(=寒府)が、下腹の冷え込みを治す穴として有名。
原因症状診断名
小腸水分分泌亢進と栄養吸収力低下下腹痛(-)、軟便・異臭便吸収不良症候群
抽送運動亢進下腹痛(+)、下痢急性下痢(食中毒)
蠕動亢進
結腸撹拌運動亢進下腹痛(+)、便秘痙攣性便秘
蠕動低下下腹痛(-)、便秘弛緩性便秘
直腸炎症による反応性亢進下腹痛(+)、裏急後重※ 食中毒など
直腸の反応性低下下腹痛(-)、便秘常習性便秘
2.内臓刺
腹部から内臓に到達する深刺する方法、内臓刺。下行結腸~S状結腸の腸管に対する直接刺激として、左下腹部から鼠径部から深刺する方法をいう。
腰部からでは左腸骨稜縁から深刺する者もいる。このやり方では腸壁への直接刺激は
できないが、腸へ響かすことができれば効果がある。
直腸刺激は、解剖学的に左下腹部からの刺針で行うことはできず、尾骨端あたりから刺入する。なお上行結腸に対する治療となる右下腹部への深刺に関する記述は見当らない。
腹部からのアプローチ
①秘結穴(左腹結移動穴)
仰臥位。左上前腸骨棘の前内縁中央から右方へ3㎝の部。下行結腸刺激。
(または左上前腸骨棘の下縁中央より右方へ3㎝、上方へ3㎝の部)
②左府舎左腸骨窩部に糞塊を触知する場合、その塊(府舎穴になる。府舎穴の位置は鼠径
溝の中央から、一横指上方に位置する)を目標に、寸6の6番の針で、やや内方に
向けて5㎝直刺すると下腹部から肛門に響きを得る。S状結腸刺針になる。
③S状結腸直刺
左腸骨窩で、後上腸骨棘から恥骨結合までの10㎝あまりの領域に、2~3本刺針。
3㎝ほど入れるとS状結腸に達する。急性下痢に適応。
④四満移動穴
臍下2寸に石門をとり、その左外方1寸の部を取穴(標準の四満穴は石門の外方5分)。
実証者の便秘には、3寸#3で直刺、2寸以上刺入して、上下に針を動かす。この時、患者の拳を握らせ、両足に力を入れしめ、息を吸って止め、下腹に力を入れさせる。肛門に響けば直ちに息を吐かせ、抜針する。
虚証者の便秘には、2~3寸、#2~3で直刺、2寸以上刺入し、針を弾振させて、肛門に響かせる。この時、患者は口を開かせ、両手を開き、全身の力を抜き、平静ならしめる。