2)腰部からのアプローチ
①左大腸兪
第4、5腰椎棘突起間の左外方1.5寸。下行結腸刺激。直刺3㎝。左下腹に針響を
与える。
②便通穴
左腸骨稜の最も高い部の骨際を取穴。2寸針にて、やや内下方に向けて直刺。
深さ5 0㎜で下腹部に響きを得る。
③左肓門外方
志室の上1.5寸。L1外側8㎝の部。下行結腸刺激。脊柱の方に向けて圧すると広
背筋、外腹斜筋を触知できる。その筋群を直刺する方向と角度で4㎝刺入し、強刺
激を与える。これだけで必ずといってよいほど通じがある。
3)会陽-直腸刺針
尾骨先端両側を取穴。針先を上に、そしてやや内側に向けて5㎝以上刺入すると、
針の響きを肛門の深部直腸の下部にはっきり感ずる。裏急後重(しぶり腹)に適用。
直腸壁への刺針は、腹側から行うのは難しく、伏臥位にて仙骨下端外縁から行う。
陰部神経枝である下直腸神経刺激と会陰神経刺激になると思われる。
4.便秘者への生活指導
1)緊張性便秘、過敏性腸症候群
交感神経と副交感神経のバランスをよくするため、その切替えをうまくすること。
緊張が続いたあとはリラックスするなど、メリハリのある生活習慣を心がける。
2)弛緩性便秘、常習性便秘の治療プログラム
排便ネットワークの正常化と横隔膜の鍛錬が重要だが、その前に大腸内の悪玉常在大腸菌を
洗い流すことも意味がある。
①下剤を使用し、大腸リセット
腸内悪玉菌であるウェルシュ菌等を洗い流す。これで腸内細菌は以前の1000分の1になる。
②乳酸菌飲料を飲む
腸内細菌は24時間以内には元の数に戻るので、多量に排便があった直後(1時間以内)
に乳酸飲料400mlを飲む。その日は水分補給のみで断食。
③排便ネットワークの再構築
・直食後トイレに行く習慣(排便のイメージトレーニング)
・規則正しい食生活、食生活の改善
大便の材料となる食物(繊維質の多いもの)を摂る。玄米、麦飯、豆、海藻、
野菜、果物、キノコなど
繊維性の食物が便秘に良い理由
繊維は消化されず、水を含んで大腸に到達し、便の量を増やす。便の量が多くなると排便反射を刺激す
る。昔は繊維質は不消化物だといって食べるなといわれた。野菜、くだもの、芋、豆類がよい。ジュー
ス(ミキサーで作ったもの、ジューサーは不可)もよい。果物は皮と一緒に食べること。リンゴは皮ご
と、ミカンは袋ごと食べる。
④腹筋と横隔膜の筋肉トレーニング
・下肢伸展での座位。息を吸って止めた状態で、下肢挙上しV字姿勢。そのまま下肢を左右
2回ずつ振る。そして足を降ろしながら息を吐く。これを4回、3セット朝晩実施。
・マニピュレーション:1周15秒を目安に、腸の流れに沿いながら、腹を軽く押圧。
3)下剤などへの説明対応
・センナ、ひまし油などの刺激性下剤はよく効くが、長期使用は、排便反射を減退させ、次
第に使用量も増加する。かえって自力排便を困難にする。
・酸化マグネシウム(通称カマ)は便をふやけさる。水を便中に取り込み、体積を増し、軟
らかくすることで排便を促す。副作用が非常に少ないので長期使用にむくが、排便効果は
弱い。
・重症化した便秘には浣腸を使用。根本解決にはならない。
・腸洗浄(40分程度の時間をかけ、10ℓ の水で腸を洗う)も有効だが、専門の処で行
うと1回2万円と高価。悪い作用をする腸内細菌を洗い流す作用がある(24時間で元の
数にまで増殖する)。