3)灸での減感作療法-発作を起こりにくくするために
①理論
中国での喘息に対するメインな治療法は埋植療法である。これは喘息のツボに、絹糸や羊
腸線、ウサギの脳などを入れる方法であり、減感作療法と似た面をもつ。
身体の中に異物が入ってくると、身体は退治しようとして、アレルギー反応が起きる。し
かし、その異物は大した悪さをしないことが分かると、同じような刺激にあっても以降は過
敏反応を呈さなくなる。そこで用いられるのが手術用の糸や絹糸の埋め込みである。
異種蛋白を皮下に埋め込む方法は、日本の鍼灸師は許可されていないが、その代表として
直接灸がある。これは皮膚を焼いて蛋白質を変性させることにより、異物を皮下に埋めたの
と同様の効果がある。ただし皮下に異種蛋白ができなければならないので、上質モグサでは
効果が乏しい。灸頭針用の質の悪いモグサを使い、米粒大の灸をすえる必要がある。
(小児にこの大きさの施灸をすると身体が大きくなるにつれ、灸痕も拡大して醜くなるので
厳禁。小児にはショウガ灸でよい)
②伏臥位で上背部の温灸用もぐさを使った透熱灸強刺激
選穴:伏臥位。大椎~至陽(督脈上の棘間穴の中から、圧痛の強い2穴を選択)、左右の
肺兪と左右の膏肓(できるだけ肩甲骨を開かせてその内縁で、筋肉のあまりない処)
を選択。計6点を選ぶ。
施術:灸頭針用もぐさを使用。底辺直径2~3㎜、高さ5㎜大の艾炷をつくり、上記穴に9
壮づつすえる。9壮×6ヶ所=54壮になる。熱さは1壮で30秒間ほど続く。粗悪もぐさ
を使う処が治療のカギ(異種蛋白をつくるため)である。
効果:10日前後または発作時に、再び同様に施灸する。3回程度の治療で改善するのが
普通で、1年に3回治療というパターンを継続する。ただし10日毎ならば何回すえて
もよい。
4)こり治療(発作誘発原因の緩和)
①頸肩部コリへの皮内針
気管支喘息患者発作時の治療として皮内針治療を実施した結果、同
じ患者でも、効く場合と効かない場合のある。
患者によっては、アレルゲンや感染によって発作が起こるのではなく頚肩部の
筋のコリが発作の誘因になっている場合がある。コリを緩めることで発作が楽にな
ることもある。
肺は自律的に呼吸運動を行うのではなく、呼吸筋(安静時は75%が横隔膜、残りが外肋間
筋の運動)に依存している。ただし気管支喘息発作時では呼気性呼吸困難を呈し、このような
積極呼気時の際は、主呼息筋である内肋間筋はもちろん、補助呼息筋である腹壁筋が収縮する。
最大限に呼吸運動を増強するには、「肩で呼吸する」という言葉もあるように、肩甲上部筋や
頸部筋(胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・僧帽筋)も活用される。呼吸筋に緊張があれば、これ
がトリガーとなり喘息発作を誘発することがある。
横隔膜運動主体の呼吸を腹式呼吸、肋間筋運動主体の呼吸を胸式呼吸という。通常の呼吸は、
両者の共同による。
②前鋸筋への皮内針
喘息様患者に、側胸部へ皮内針をして
呼吸苦の改善、この施術ポイントを腋
窩点と名付けた。
しかし最近、右記のトラベルのトリガーポイント図
に、前鋸筋が描かれていることを知った。前鋸筋のトリ
ガーポイントは肋骨の動きを制限するため、呼吸がし難
くなり、「息苦しい」「息切れする」「空気が足りな
い」と言った訴えを起こすようになると記載されてい
る。淵腋穴のやや下方に位置している