顔面痙攣
1)症状
一側の顔面が長期間、強く痙攣する状態。通常、眼周囲から始まり、次第に口角へと広がる。
当初は緊張した時などに時々起こるのみだが、徐々に痙攣している時間が長くなり、一日中
ときには睡眠中も起こるようになることもある。
眼瞼痙攣:顔面痙攣の初期である眼瞼部のみの痙攣時は、それが一側性であれば顔面痙攣であり、両側性であれば眼瞼痙攣と予想する。
三叉神経痙攣:悪寒戦慄や三叉神経痛では、局所的な三叉神経運動線維の痙攣として咀嚼筋に出現。
全身痙攣の部分症状としては、破傷風・ヒステリー・てんかん等でみることがある。
2)原因
脳血管の異常走行により、脳幹より出る顔面神経に脳の血管がぶつかり、拍動のたびに刺激
している状態。脳血管異常走行の原因としては、加齢、脳動脈硬化、先天的動脈奇形。
3)一般的治療
①薬物内服療法:あまり効果なし
②神経ブロック療法:施術時に強い痛みを伴う。一定期間顔面神経を麻痺させる効果がある
のみで、同じ対症療法であるならばボツリヌス療法が推奨できる。
③ボツリヌス菌毒素注射
ボツリヌス毒素はボツリヌス菌のもつ毒素で、食中毒をおこして随意筋を麻痺をさせ、重
症では横隔膜運動も麻痺して致死的になる。この作用に注目し、ボツリヌス菌毒素を希釈
(製品名ボトックス)し、筋を痙攣している眼瞼周囲や口角周囲に筋肉注射して、顔面神経
を麻痺させることを考えた。この治療は比較的容易だが、持続効果は3~4ヶ月であり、その
たびに本注射を実施しなければならない。1回2万円程度(3割負担者)と高額。
ボツリヌス菌毒素注射は、美容整形において、皮筋を麻痺させることで、顔面のシワとりにも用いられる。
④手術「微小血管減圧術」
顔面神経にぶつかっている血管の位置を移動させる手術で、原因療法になる。たたし顔面
神経と聴神経(=内耳神経の別称)は非常に接して走行しているため、手術後遺症として、
数%~10%程度の者に聴力の障害が残る可能性がある。有効率9割。
要するに、三叉神経痛と眼瞼痙攣の手術の原理はよく似ている
眼瞼痙攣
眼瞼痙攣となる疾患には、①顔面痙攣の初期、②眼瞼ミオキミア、③本態性眼瞼痙攣がある。
1)眼瞼ミオキミア
①病態生理と症状
眼瞼ミオキミアはまぶたの一部(下眼瞼が多い)が痙攣する。一方、本態性眼瞼痙攣は両
眼の上下眼瞼とも等しく痙攣する。
ミオキミアは不規則で持続時間が長い小さな不随意運動で、自覚的にはピクピクとした感
じが一般的である。下位運動神経に異常な電気活動が生じるため、その支配下にある筋線維
が安静時に群発して興奮することによって起こるとされる。これが眼輪筋で起こると、眼瞼
ミオキアになる。顔面神経が支配する眼輪筋の一部に異常な興奮が発生することで生じる。