③三叉神経第3枝(下顎神経)
a.神経走行:卵円孔を通り、耳介側頭神経、下歯槽神経などの枝を出す。
卵円孔
半月神経節-卵円孔咀嚼筋枝→側頭筋、咬筋、外側内側翼突筋を運動支配
耳介側頭神経(鼓室神経と交通)→外耳道、鼓膜、顎関節知覚
下顎管→ 下唇を知覚支配
おとがい孔
下歯槽神経→下歯髄・歯齦知覚支配-おとがい孔-おとがい神経
b.おとがい神経ブロック点
口角の下方で、下顎骨の縦幅の中点
2)症候性三叉神経痛の原因
①脳腫瘍や脳血管が神経に接触し圧迫
橋付近の血管による三叉神経圧迫が最も多い。
特発性三叉神径痛の1割で脳腫瘍が発見。
②神経走行上の感染症が三叉神経を刺激
副鼻腔炎:副鼻腔は三叉神経第1枝支配である
帯状疱疹ウイルスの感染→ハント症候群
③頭蓋外の三叉神経走行の近隣組織による圧迫→緊張性頭痛など
3)症状
中年女性に多い。第2枝または第3枝が侵されることが多い。
1日数回の数秒~数十秒間の激烈な痛み(間欠期は無症状)。誘発部位に触れると症状誘発。
第1枝痛→髪をとけない第2枝痛→鼻をかめない第3枝痛→ヒゲを剃れない
筋力低下や感覚障害(知覚鈍麻やしびれ)は生じない。←(+)時は、脳腫瘍など中枢疾患考慮
4)一般的治療
①薬物療法
一般の鎮痛薬は無効。抗てんかん薬のカルバマゼピン(製品名:テグレトール)は対症療
法としては効果的だが、徐々に服用量が増加し、副作用(肝機能障害やふらつきなど)で、
中期的には薬が飲めなくなる傾向にある。
②神経ブロック
アルコールによる神経ブロックの有効期間は約2~5年。ただし神経ブロックそのもの
(半月神経ブロック、上顎神経ブロック、下顎神経ブロック)が、強く痛む治療になる。
③手術「微小血管減圧術」
根治療法になる。専門医による治療。全身麻酔下で、神経を圧迫している血管を神経から
剥がし、圧迫を解除する。有効率ほぼ100%。
3.顔面部の知覚鈍麻
三叉神経の障害は、痛みだでなく、知覚鈍麻を起こすこともある。歯科治療で、不整な智歯
(=親知らず)抜歯時に、下歯槽膿神経を切断した場合、下顎・下唇・舌側面の知覚が鈍麻する
場合がある。これは歯科治療で、起こりえる医療過誤である。徐々に回復するか否かは、損傷の
程度による。
鍼灸治療
部分的な知覚鈍麻を訴える患者が来院。
治療
神経走行部に刺針を行うと、症状軽減。
まぎらわしい神経と主な機能
①顔面神経の鼓索神経→味覚:顔面麻痺時の味覚異常
②舌咽神経の鼓室神経→中耳・鼓膜の知覚:中耳炎痛、めまい・耳鳴にも関与
③顔面神経膝神経→外耳道・耳介中央部の知覚:ハント症候群の耳痛部位
④三叉神経の耳介側頭神経→外耳道・鼓膜・顎関節の知覚←鼓室神経と交通