②原因
健康な人でもワープロやパソコンの長時間操作などがもたらす眼精疲労や、寝不足の際に
一時的に感じられることがある。ただし、脳幹部の腫瘍や炎症、多発性硬化症、外傷による
顔面神経損傷の後遺症なども原因になる。
2)本態性眼瞼痙攣
①原因
多くの報告から大脳基底核の運動制御システムの障害であるとされる。間代性・強直性の
攣縮が両側の眼輪筋に痙攣が起こる。40歳以降の女性に多い。
大脳基底核=大脳皮質の底にある白質中の灰白質部分。随意運動の発現と制御の役割。
②症状
初期はまばたきが多く、目が開けにくい、まぶしいなどの症状があり、眼がショボショボ
するのでドライアイと誤診されやすい。両側性に、羞明感、目の乾燥、目を開けていられな
い、下眼瞼のピクピク感といった症状が現れ、次第に上眼瞼に拡大。左右両方に進行性の眼
瞼痙攣が出現し、重症の場合には、開瞼障害をきたして、視力があるにも拘らず生活上は盲
目と等しくなることがある。進行は緩徐だが、自然軽快はまれ
③治療
初期症状には、ボトックス(ボツリヌス毒素希釈液)による注射が有効。眼が開けられな
くなれば、有効な治療に乏しく、眼輪筋を切除する治療になる。この手術により眼は開けや
すくなるが、ボトックス注射の回数が減るわけではない。針灸治療は、ほとんど無効である。
顔面麻痺の鍼灸治療
麻痺している神経への刺激と、麻痺筋への刺激に大別できる。ほかに頭蓋内の血行促進を目的
として、星状神経節刺針が行われることがある。
1.顔面表情筋刺激
麻痺筋に低周波置針通電を10~20分間行う。とくに
モーターポイントを刺激すると筋攣縮は強くなる。
顔面表情筋は、皮筋なので浅刺する。
2.顔面神経刺激
顔面神経の顔面部走行は、耳垂
の直下を通り、顔面部に扇型に広がる。その主要枝は、
頬骨から上は側頭枝、下は頬骨枝である。
耳垂が顔面に付着する部の中央
低周波通電10~20分間を行う。
- 顔面神経幹
①耳垂後方で、乳様突起と下顎骨の間。顔面神経幹が茎乳突孔を出る部。凹みの底の骨にぶ
つかるように刺入する。意外に難しく、刺入方向を誤ると強い刺痛を与えることが多い。
②
耳垂が付着している頬部の中点。奥に顔面神経幹が通る。パルス通電しながら刺入し、唇
や頬が最も攣縮する深さ(5㎜~1㎝)で針を留める。
直刺2㎝では舌咽神経の鼓室枝(鼓膜の知覚支配)に命中し耳中に響く。これは難聴耳鳴の治療に用いる