喉頭疾患の鍼灸治療
喉頭症状は、咳嗽(ノドから出る)と嗄声であるが、神経的・筋肉的に同一の障害になる。
以下は便宜上、咳嗽の治療あるいは嗄声の治療に分類している。
喉頭症状(咳嗽、嗄声)の鍼灸治療点
気管軟骨刺‥‥‥‥ 迷走神経刺激
天突移動穴は、気管軟骨刺の特殊型
輪状甲状筋刺‥‥
声の高さを決定する筋刺激→声帯に影響を与える
上喉頭頭神経外枝刺激
肩髃置針‥‥‥‥ 嗄声の治療の遠隔治療
下咽頭収縮筋刺‥‥ 嗄声の局所治療
1.咳嗽の鍼灸治療
1)天突移動穴刺
適応:嗄声、咳嗽
位置:標準天突穴のやや上方。座位にさせ、胸骨上端に示指先を当て、気管軟骨を
撫で上げつつ爪先で押圧すると、気管軟骨上に咳を誘発する過敏点を発見できる。
刺針:座位。寸3#2で、針が軟骨にぶつかって止まるまで直刺。深度は1~2㎝。
雀啄して抜針する。※天突移動穴刺は、次の気管軟骨刺の特殊型になる。
2)気管軟骨刺
適応:上位気管に起因する咳嗽、嗄声※気管支や肺の病変による咳嗽には効果不確実。
位置・刺針:下喉頭神経を刺激するには、喉頭~気管軟骨の範囲に刺針する。深さは5~7㎜。
気管、喉頭ともに、前面と側面から4~5本づつ、1~2㎝間隔で刺入する。
効果:急性症では2~3回の治療でよいが、慢性では長期治療が必要である。
自宅では前頸部に知熱灸を行わせる。
2.嗄声の針灸治療
嗄声には声帯そのものの異常が原因である場合と、反回神経麻痺が原因である場合の2種類がある。最も頻度は多いのは、感冒や大声の出し過ぎによる一過性の声帯の炎症である。安静にしていれば治る嗄声に対し、その治癒を促進させる程度の効果が針灸にあると考えられ、基本的に、喉頭周囲筋のコリを緩め、血流増加することを治療目標とする。
1)輪状甲状筋刺
輪状甲状筋は甲状軟骨下端と輪状軟骨を結ぶ、上喉頭神経外枝(運動線維)支配の筋で、発声時の音の高さを調整する作用がある。嗄声の手技療法として、甲状軟骨と輪状軟骨の間を母指と示指でつまみ、大きく左右に揺り動かす方法が知られているので、輪状甲状筋刺針が嗄声の治療に効果をもたらす可能性がある。
本筋に刺針するには、甲状軟骨と輪状軟骨の前正中の間隙を触知し、これを基準点として左右に1㎝ほど移動した2点を刺針点とする。1㎝ほど刺入した状態で発声させるとよい。
2)下咽頭収縮筋とその周囲に注射すると、その直後より正常な声が出始めることがある。
下咽頭収縮筋:咽頭腔を後方から包むように上・中・下の咽頭収縮筋がある。これらは互いに協調運動を
して嚥下機能を果たしている。
位置:甲状軟骨と輪状軟骨の左右外縁。
刺針:浅針を数本置針して、発声させる。