2)原因
感染性:感冒の部分症状として出現。鼻炎、咽頭炎を伴うことが多い。
物理・化学的刺激:音声酷使、喫煙、ガス、塵埃の吸入
3)症状:嗄声、咳、咽頭異物感・軽度の発熱
4)治療:声帯の安静を保つため、なるべく発声しないこと。吸入療法。
R / O 喉頭癌
声門癌が最も多く、ついで声門上癌、声門下癌の順。
声門癌は高齢者で男性に多い。多くは扁平上皮癌である。
症状:声門癌では早期から嗄声を生じ、進行すれば咳嗽出現。進行すると失声、
末期には声門狭小となり呼吸困難。
予後:5年生存率90%(声門癌)
3.慢性喉頭炎
1)原因:急性喉頭炎の反復、音声酷使、声帯ポリープ
2)症状:嗄声、咳、喉頭不快感
3)治療:急性喉頭炎に準ずる。ポリープであれば切除する。
4.反回神経麻痺(=声帯麻痺)
1)反回神経の走行
反回神経は迷走神経から分岐して喉頭内に侵入する。この経路で、左反回神経は大動脈弓を迂回して上行し、右反回神経は鎖骨下動脈を迂回して上行するので、途中で圧迫を受けやすい。反回神経麻痺は、左側が右側より圧倒的に多く、3:1の比率である。
左側は大動脈弓の下、右側は鎖骨下動脈の下を通るので、圧迫されて嗄声や呼吸困難がおこりやすい。
2)原因
喉頭周辺の腫瘍(食道癌や喉頭癌、甲状腺手術)や胸部大動脈瘤により、反回神経を圧迫。全身麻酔による長時間喉頭圧迫。ただし原因不明であることが最も多い。
3)症状
臨床上、声帯は一側の副正中位をとることが最も多いが、中間位や正中位である場合もある。
①一側性麻痺の場合、副正中位ならば嗄声をきたす。
②両側麻痺では、声帯が開いていると嗄声がおこる。会話する場合は、何回も息継ぎをしなが
ら、しかも枯れた声になので、聞く方はなかなか理解しにくくなる。
③両側性麻痺で、両側声帯が正中位で固定していれば、呼吸困難が起こる。
反回神経麻痺では、声が出にくくなるのは、左右の声帯が開いているため、呼気による声帯の振動がおこりにくい。そのため患者は呼気量を増やして声を出そうとするので、発声の持続時間が短くなる。30秒以上が正常だが、ひどい場合は3秒以下になる。手術の適応となる目安は、10秒以下である。
4)治療
原疾患が明らかであり治療可能ならば、その治療を行う。原因不明なものについては、ビタミンB1剤、ATP剤、血管拡張剤、ステロイド剤などを適宜使用してみる。これらの治療で、麻痺自体が改善されれば問題はない。例え治癒しなくても健側声帯が正中を超えて患側まで動くのであれば代償作用が期待でき、嗄声の軽減も期待できる。
6ヶ月間これらの保存療法によっても麻痺が治癒せず代償作用も起こらない場合、手術療法を考慮する。現在の医学では、動かない声帯を動かすことは不可能なので、閉鎖しない声門を元々狭くしておくことで発声時に閉鎖しやすくする。つまり、麻痺した声帯を内側に寄せる手術になる。
5.咽頭神経症
1)鑑別診断
咽頭異物感では、まず咽頭神経症(梅核気)を思い浮かべるが、以下の疾患を除外する。
R/O 食道癌:「食べた物が下に入っていかない」と訴える。
R/O 喉頭癌:嗄声が初期症状。進行すると呼吸困難出現。
2)概念
器官神経症(心臓神経症、血管運動神経症、胃腸神経症など)の一つに分類される。精神神経疾患では比較的多くみられる。かつてはヒステリーの重要症状とされていたが現在は否定されている。更年期女性にも多くみられる。