3)喉頭腔と発声
喉頭腔の側壁には前後に走る上下2対のヒダがあり、上ヒダを室ヒダ(前庭ヒダ)、下ヒダを声帯ヒダとよぶ。1対の声帯ヒダの間の間隙を声門裂とよぶ。呼吸時には声門裂は完全に開いている。発声時には声門は閉じ、吐気流が声門振動させる。
仮声帯:通常の声を出す時は、あまり働かない。その役割はあまり分かっていないが、
ヨーデルやホーミーなどで使用するという意見がある。
3.喉頭知覚
喉頭粘膜知覚は、声門より上が上喉頭神経内枝、下が下喉頭神経が支配する。
迷走神経上喉頭神経内枝(知覚枝):声門上の喉頭知覚、咳嗽反射
外枝(運動枝):輪状甲状筋(嗄声)
下喉頭神経知覚枝:声門下の知覚
(反回神経) 運動枝:大部分の喉頭筋(嗄声、呼吸困難)
咳嗽喀痰と喉頭の代表疾患
1.咳嗽、喀痰の鍼灸の適否
咳は乾性咳(痰なし)と湿性咳(痰を伴う)に大別できる。一般に、乾性咳の方が軽症。
1)急性の咳嗽・喀痰
①乾性咳かつ、②ノドから込み上げるような咳、ならば上気道炎が疑わしいので、針灸単独治療可能。実際に針灸に来院することの多いのは、慢性喉頭炎であろう。
急性の咳・痰の鑑別ツリー
急性の咳・痰
強い症状(激しい咳、呼吸音異常、消耗感)→ 肺炎(医療受診)
高熱+全身症状→ インフルエンザ(医療受診)
咳は胸から出る感じ→(医療受診)
咳はノドから出る感じ→普通感冒・急性喉頭炎(針灸適応)
2)慢性の咳嗽・喀痰疾患
慢性疾患で乾性咳、湿性咳の出る呼吸器疾患は非常に多く、鍼灸師が予想診断をすことは難しく、医療機関受診後の治療が前提になる。平熱で慢性咳嗽で来院するのは、次のものが多い。
①上気道疾患:慢性扁桃炎、慢性咽頭炎
②下気道疾患:老人性の呼吸器退行変性といえるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、
すなわち肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息
COPDでは現代医学的治療も行われるが、根本的な治療に乏しいのが現状である。
慢性咳嗽の鑑別ツリー
慢性の乾性咳
次第に増悪傾向:初期の肺結核や肺癌(医療受診)
咳はノドから出る感じ:慢性喉頭炎→鍼灸単独治療可
咳は胸から出る感じ
慢性の湿性咳
まず医療受診し病名を明らかにする
感染症→ 現代医学治療単独
↑
非感染症重篤感(+)
重篤感(-)→現代医学+鍼灸治療併用可
2.急性喉頭炎
1)病態生理
喉頭炎時の咳は、ノドからこみ上げるような咳が特徴。本来咳嗽は、喉頭粘膜が異
物や分泌物になどにより刺激されると、上喉頭神経内枝を介して咳嗽反射が起こり、
異物を気管内に入るのを防ぐ役割がある。