②不安定膀胱
膀胱に尿が溜まると副交感神経の作用によって膀胱が収縮して排尿の準備が進行する。膀
胱に尿が少し溜まった時点だけで収縮が起きると頻尿になり、日常生活に支障をきたす事に
なるので、生理的には膀胱が尿である程度溜まるまで副交感神経の活動を大脳が抑制し、安
定した蓄尿が維持されている。
この大脳による抑制が未熟で不十分だと、一時的な軽微な膀胱の収縮が発生し、一部の尿
が排泄されてしまう。いわゆる『ちびり』として観察される。
このように抑制が不十分で収縮することを無抑制収縮と呼び、この様な膀胱を不安定膀胱
と呼ぶ。不安定膀胱は実は誰でも経験していることで、幼児期には皆この状態にある。
3)混合型夜尿症
(1)と(2)が合併したタイプ。つまり夜間尿量が多く、睡眠時膀胱容量が低下したタイ
プである。実際にはこのタイプの夜尿症が圧倒的に多い。
3.予後
夜尿を放置した場合、小学校5~6年生(11歳~12歳)になって50%の確率で自然治癒する。
また年齢にかかわらず毎年平均10~15%の夜尿症小児が自然治癒すると考えられている。
相川医師による夜尿症専門クリニックで夜尿症治療を行なった場合、治癒するまでの平均期間
は1年6ヶ月だが、自然治癒率の場合は6年前後を要した。
4.夜尿症の現代医学的治療
1)薬物療法
効果がみられた時点で、持続投与し、一定期間後に徐々に減量する。
多尿型:三環系抗うつ剤(トリプタノール、トフラニールなど)。
→尿意覚醒作用、尿量減少作用、抗コリン作用)
デスモプレシン点鼻薬(抗利尿ホルモン剤)
膀胱型:抗コリン剤(ブスコパン、バップフォーなど)。膀胱括約筋を緩め、膀胱収縮を抑
制して膀胱容量を拡大させる
2)その他
面接療法:対して気にする病気ではないこと。本人に自信をもたせること。
生活指導:日中あまり興奮させたり疲労させない。夕食後は水分を控える。
5.夜尿症の鍼灸治療
1)鍼灸の有効性
夜尿症の治療、治る場合と治らない場合がある。通常は数ヶ月の加療が必要となる。
夜尿症児童の改善の流れは、夜の早い時間帯にしていた夜尿が、徐々に朝方にシフトし
ていき、その後夜尿をしない日が出て、頻度も減少しつつ治癒へと向かうのが普通なので、
治りやすさの目安は次のようになる。
重症:就寝後1~2時間に放尿:膀胱内に尿が十分貯溜されていないのに放尿する。
軽症:真夜中や明け方に放尿:週1~2回という軽症タイプが多い。
2)夜尿症の鍼灸治療
研究により、夜尿症に対する中髎刺針の効果は、膀胱容量を拡大させる作用ら
しいことが解明された。膀胱壁を交感神経優位に導くことで、尿道括約筋の活動を亢め
ることで膀胱容量が増え、夜尿発生に至る時刻を遅らせるらしい。