①Ⅰ型夜尿症に対する中髎刺針の有効性
Ⅰ型夜尿症(膀胱内圧上昇時にも、浅い睡眠に移行するも覚醒に至らないタイプ)Ⅱa型は脳波上、覚醒反応が生ぜず、深い睡眠のまま夜尿する。Ⅱb型は膀胱に生じる無抑制収縮を原因とした膀胱機能障害であり、深い睡眠のまま夜尿する。
薬物療法無効の8例。週1回施術で平均5回強治療。
夜尿出現率が10%以上改善した者は4例、10%以下の無効例は4例だった。
有効例はすべて初発尿意(膀胱にどの程度の尿が溜まったら尿意として自覚するか)が改善した。機能性膀胱容量の増大と初発尿意の延長が、夜尿症の改善に関係あるらしい。
最新の知見では、夜尿と睡眠の浅深は無関係であることが分かった。つまり上記成績は、Ⅰ型夜尿症に限定されるものではない。
下位排尿中枢(S2~S4)刺激:八髎穴の針灸
②仙骨間裂孔(長強)へ長針にて深刺。
③胆嚢症としての治療
従来の夜尿症の治療に加え胆嚢症としての治療を加えた結果、著しい治療成績の向上をみた。夜尿症の者の膀胱内圧が過緊張を示す(神経性過緊張性膀胱)が、こうした者は胆嚢痙攣が生じやすい(筆者註:ともに内臓平滑筋痙攣である)。こうした点から夜尿症と胆嚢症は体質的に同じ基盤の上に成り立つ疾病ともいえる。夜尿症は東洋医学的には胆の病証であり共通点があると記している。
代表治療点は、胸脇苦満(軽度)、右陽白の圧痛、リーブマン点(右C7棘突起直側)に
なる。
④普段、夜尿をしない児童が、日中に非常に疲労したり、精神的ダメージを受けた日の夜に夜尿するのは、日中に交感神経緊張過剰になったのを、揺り戻す意味で、夜間に副交感緊張過剰になった結果である。治療としては日中の交感神経緊張過剰な状態を改善すればよいのだから、これを是正する目的で、小児針を始めとする軽刺激の鍼灸を行う。
インポテンス
1.インポテンスとは
広義(日本の定義):性欲、勃起、性交、射精、極致感のいずれかが不十分なもの
狭義(欧米の定義):勃起障害(ED)
※生殖不能者:生殖不能者は性交は可能だが生殖能力を欠く者をいう。
男性不妊者であり、インポテンスとは異なる。
2.性欲
性欲はホルモン系主体であり、性的興奮や勃起は神経系血管主体である。
1)性欲の機序
性欲は、性ホルモンにより生ずる。男性の場合、下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)が睾丸に働きかけ、睾丸からテストステロンが分泌されることによる。(女性ではゴナドトロピンが卵巣に働きかけ、卵巣からエストロゲンが分泌されて起こる)この時の性欲は、下等動物レベルとしての性欲であり、人間としての性欲はテストステロンが視床下部で感受されて生ずる。
ゴナドトロピンテストステロン
↓ ↓
下垂体前葉睾丸視床下部