関節包の痛みと鍼灸治療
知覚神経が興奮すると痛みを感じるが、知覚神経はどこも均一に分布しているわけではない。 骨は痛まないが骨膜は痛みを感じる。関節部においては、骨膜は関節包に移行するので関節包 も痛む。関節包は腱筋につながって関節と連動して牽引収縮されるので痛む。 関節包は外層と内層に区分され、外層を線維膜とよび、内層を滑膜とよぶ。線維膜は強靱で知 覚神経が分布し、滑膜は血管に富み関節液(=滑液)を産生分泌する。この関節液は、関節の潤 滑油および栄養液として機能している。 滑液は無色透明の液体で、ヒアルロン酸やタンパク質などを含み粘り気がある。滑液の粘度は温度によっ て変化する。温度が上がればその粘度は少なくなり関節自体の動きもスムーズになる。
筋腱の痛みと鍼灸治療
膝関節が腫脹したり、軟骨が摩耗したりを繰り返すうちに、膝の動きが悪くなり、かばうため に筋の柔軟性も減少してくる。とくに筋の骨付着部や、筋腹のモーターポイント部に圧痛硬結が 出現してくる。筋腱付着部の硬結圧痛は、膝蓋 骨周囲の外縁、内外の大腿脛骨関節裂隙、鵞足 部に出現しやすい。腱、筋肉の異常、傷害によ る問題は、痛みを生ずるという点で非常に重視 すべきである。
大腿部周囲の硬結圧痛
膝蓋骨の上縁に筋付着部症が出現しやす い。四頭筋腱の緊張は、その上部にある四頭 筋緊張により二次的に生じた結果なので、四 頭筋筋腹にあるトリガーポイント(モーター ポイントと一致)へも施術。 大腿四頭筋のモーターポイントは、大腿中 央より下方にあり、内転筋群は大腿中央より 上方にあることが知れる。 大腿四頭筋-膝蓋骨-膝蓋腱-脛骨粗面は、膝関節の伸展機構として一体として捉えること ができるので、膝蓋骨下縁の膝蓋腱付着部の圧痛も同時に診察し、圧痛あれば施術。
モーターポイントとは
運動神経の末梢がその支配する筋に進入する部分で、 経皮的電気刺激に対して最も鋭敏であり一定量の刺激 量で、その筋が最も著明に収縮する部位のこと。 2
鵞足部の圧痛硬結
膝窩部の痛み 膝窩部痛の原因の一つとして膝窩筋の緊張(=膝窩筋炎) が知られている。しかし立膝位または四つん這い姿勢にて膝 窩の圧痛硬結を探ると異常がある場合、その浅層にシコリを 触知できることから、筆者は膝窩筋ではなく、足底筋の異常 緊張である。
関節の熱感・腫脹
老化や外力により関節の軟骨が摩耗 →摩耗の際にでた軟骨の破片が関節液中を 浮遊→滑膜内の細胞を刺激して関節内に炎 症→熱感・腫脹→この反応時、知覚神経を 刺激→膝関節痛 熱感が強い時、鍼灸を行うと症状を悪化 させやすい。数日~数週間は、そのまま安 静にするか、冷却するべきで、熱感が落ち 着いた後に、鍼灸治療をすること。熱感が さほど強くない場合、針治療は差し支えないが、この場合でも軽度刺激にとどめるべきである。