②前立腺肥大症(第Ⅰ期)
前立腺肥大症第Ⅰ期に対して、週1回の中髎刺針を行い、平均6回あまり施術した。夜間
の排尿回数減少、および昼間排尿間隔の延長がみられた。ただし治療終了後は元に戻る傾向
があった。
③排尿筋、外尿道括約筋協調不全
神経因性膀胱の一タイプ(膀胱機能正常、尿道機能は過活動)で、主訴は排尿困難。6例
中、4例で排尿困難が消失、1例は改善した。初発尿意、最大尿意および膀胱コンプライ
アンスは不変。残尿量の減少も5例でみられた。
④低緊張性膀胱による排尿困難
神経因性膀胱の一タイプ(膀胱機能が低活動、尿道機能正常)で、主訴は排尿困難。
7例中、1例に排尿困難の軽減がみられた。中髎の針治療によって、排尿筋の収縮力を高
めることはできなかった。
<まとめ>中髎への刺針による効果とは、
・膀胱括約筋緊張を緩める→膀胱容量を増加するので、尿意を減らし、排尿回数を減らす。
・尿道外括約筋の緊張を緩める→外尿道括約筋の過緊張を緩めることで排尿困難を改善。
2)中髎刺激以外の鍼灸治療
①前立腺癌手術後に生じた尿失禁が三陰交直刺で効果あった例
71歳男性で前立腺癌で前立腺全摘術後、1ヶ月間放射線療法を受けたが、その後に尿失禁が出現。
常におむつがびしょびしょになる状態で、残尿感もあった。頻尿改善剤の投与を受けるが改善しない。三
陰交直刺、響きを得た後10分間半回旋刺激。治療前は必ず100ãあった尿失禁が、治療開始当日夜から
ほとんど消失し、残尿感もなくなった。治療効果は1週間後も継続し、現在は2週間に1回の治療を行い、
失禁尿量は20~30g程度。
②過活動性膀胱に対し、三陰交-太谿の刺針通電が有効
頻尿・尿意切迫感をもつ過活動性膀胱患者15例に対し、三陰交に刺針し、太谿に対極板
を貼付して、後脛骨神経刺激(20ヘルツ、30分間)を週4回合計12回行い、47%が症状消失し、20%に症
状改善。
③腹圧性尿失禁に対して、中極深刺手技針が有効だった例
腹圧痛性尿失禁の70歳女性に対して、中極穴に対して下方に45°の斜刺で4㎝刺入し、得気を得た
後、10分間半回旋刺激。週1回治療で5回治療を1クールとした。すると、1クール終了時に、尿失禁
時の不快感が消失。
④腹圧性尿失禁に、三陰交、太谿、湧泉、関元への刺激+骨盤底筋体操が有効だった例
35才女性。第2子妊娠中から、咳やくしゃみの時に尿失禁がたびたび出現。三陰交と太谿に置針、湧泉
に直接灸、関元に棒灸10分。この治療を週間に週1回計10回実施し、また骨盤底筋体操を指導。トイレが
間に合わないとの訴えは3回治療後に改善したが、寒い日などに尿失禁が強く、排尿後の尿の切れの悪さは
産後5ヶ月まで続いた。産後7ヶ月に症状が気にならないまでになった。