3)反回神経麻痺による嗄声であれば、容易に治らないのかもしれないが、「ノドが詰まる」
「声が出にくい」「ノドの違和感」「息苦しい」といった症状であれば、前頸部筋~上胸部筋
を緩める(希釈局麻剤注射)で改善できることが多い。
4)嗄声に対する肩髃刺針
深谷流では臂臑の灸を推しているが、肩髃刺針は、臂臑より確実に効果がある。
①位置:上腕を他動的に90度外転させた際にできる肩の2つの凹みの中の前方の
凹み。肩峰突起中央の関節裂隙。取穴は圧痛に関係なく行なう。
②刺針・手技:3#2で1㎝刺入し置針または手技を行ない、1~2分毎に「具合は
どうか」と問い、症状消失を待って抜針する。通常は10分間程度の置針。
(5分間程度の刺針では効果ない)
③肩髃穴には、喉~頭顔面の粘膜の炎症や浮腫を改善する作用がある、
「目の疲れ・麦粒腫・鼻詰まり・耳管閉塞・口内炎・嗄声など」すなわち頭蓋内
の粘膜腫脹症状に効果が得られる。
3.反回神経麻痺の鍼灸治療
反回神経の走行付近に発生する癌は嗄声の原因となり、その代表が肺癌である。声ポリープなどの声帯に器質的疾患があるものも鍼灸不適応である。
反回神経麻痺に伴う嗄声の鍼灸治療として、筆者は麻痺側の反回神経刺を行っている。これは中国針を用い、前頸患
側の輪状軟骨壁へ刺入、「ア、ア、アー」との発声を指示しつつ、同時に雀啄刺激を実施(20秒)。15分置針で、同時にパルス通電も併用している。
くしゃみ・しゃっくり
1.くしゃみ
1)くしゃみの生理
ホコリや化学物質、風邪ウィルスなどが鼻腔粘膜に付着すると、鼻腔粘膜に分布す
る三叉神経第1枝の分枝である鼻毛様体神経が刺激される。これを外に排除しようと
して、顔面神経運動枝が興奮し、瞬間的に強い吐気が鼻や口から放出される。この反
射運動がくしゃみである。鼻アレルギーの際の重要症状。
くしゃみと鼻漏は相関しやすい。同一神経刺激のため。
2)鍼灸治療
攅竹に針するとクシャミに速効がある。銀2番針で2~5mm刺入し、3~10秒置
針する。撚針の方が痛くない。時に刺針すると逆にクシャミを誘発する者がいるが、
それも間もなく治まり、後までに影響することはない。
2.しゃっくり(吃逆)
1)概念:呼吸中枢あたりの、しゃっくり中枢を介して起こる総合的な異常呼吸運動。
2)原因
①横隔膜刺激:胃癌およびその転移、肋膜炎、心筋梗塞、膵炎
日常的におこるシャックリは、早食いなどで食物とともに空気を飲み込むことで、胃
泡が増大し、横隔膜を突き上げて刺激することで生ずる。この胃泡は、ゲップで解消で
きる。ゲップを誘発するには、炭酸水を飲むことが推奨できる。
②中枢疾患:しゃっくり中枢に対する抑制がとれると起こる。脳腫瘍、髄膜炎、
多発性硬化症