ロコモティブシンドロームは運動器症候群ともいいます。
体が動くためには、骨・筋肉・軟骨・関節・神経などが互いに連携して働く必要があり、これらを総称して運動器といいます。
運動器は互いに連携して働いているので、運動器のどれか一つが悪くなると、ほかの運動器がその機能を補うように働きます。この状態が続くと、補っている運動器にも悪影響が及び、その結果、痛みが表れます。すなわち、どこかに痛みが出た場合は、運動器が全身を十分に支えきれなくなったことを意味します。
従来、運動器の病気は個別の運動器の問題としてとらえられていましたが、ロコモティブシンドロームの考え方では、運動器全体の問題としてとらえます。
そして、鍼灸治療では個別の運動器ではなく、体全体・運動器全体の治療・予防・機能向上ができます。
速く歩ける人は長生き
一般に、歩幅が狭くなると、歩行速度が遅くなることが知られています。歩行速度は移動能力を評価する重要な物差しとされ、要介護になるリスクや余命とも密接に関係しています。
例えば、65歳以上の人の歩行速度と10年生存率を調べた研究によると、歩行速度が速い人(1.4m/秒)の10年生存率が約90%であるのに対して、遅い人(0.4m/秒)は約60%でした。この結果から、歩行速度が速い人は、余命が長い、つまり、長生きする傾向があることがわかります。
普段歩くときは、歩幅を意識して、元気よく歩くことを心がけましょう。
速いスピードで歩くと自然に腕や脚が上がり、全身を使って歩くことができる。いつものスピードで歩くときに比べて、約1.5~2倍のエネルギーが消費される。
食事も大切
しっかりと体を動かすためには、しっかりと栄養を取ることも大切です。毎日の食事で、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの「5大栄養素」をバランスよくとることをこころがけましょう。
ロコモ対策で特に意識したいのが、骨や筋肉の材料となる栄養素をしっかりと取ることです。骨は3か月、筋肉は3週間かけて新しく生まれ変わるので、材料が不足すると骨はスカスカに、また、筋肉はやせて減ってしまいます。
丈夫な骨を作るためには、カルシウムだけでなく、タンパク質やビタミンD、Kなども必要です。筋肉の材料でもあるタンパク質は、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などを組み合わせて、毎日しっかり取りましょう。特に高齢者は肉や卵が不足しがちなので、積極的に食べることが大切です。ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は、毎日の食事でとるのが理想です。