下痢
下痢の定義:1日2回以上、軟便以上の軟らかい便が出ることを下痢という。排便回数
は関係ない。正常便は、1日1回で200g。
急性下痢
1.急性単純性下痢
1)症状・病態整理
暴飲暴食(不消化物の多量摂取、アルコール等の過飲)は、胃腸機能低下が起こるので、本来もつ消化吸収作用を胃腸が拒絶する。そのため蠕動運動亢進させ、内容物をそのまま下の消化器に送る状況になる。
以下は同じことを別の角度からみている
①大腸通過時間短縮による便中の水分吸収時間低下による下痢、②蠕動運動亢進、③腹痛(+)
2)治療:規則正しい食生活に限る。原因が明瞭なので医療を受診することは少ない。
2.食中毒
鍼灸に急性下痢は、まず来院しないが、急性下痢の代表ともいえる中毒の知識は必要である。
1)毒素型
①特徴:細菌の数は関係なく、細菌が産生した毒素を直接摂取することで発症する。
単に毒を飲んだことに変わりないので、抗生物質は無効。
平熱もしくは微熱
潜伏期間が短い。経過が急で、数時間~半日で治癒にむかう。
②種類:ボツリヌス菌(エキソトキシン毒)と黄色ブドウ球菌(エンテロトキシン毒)
a.エンテロトキシン毒素:粘液水様便
b.エキソトキシン毒素:運動系が障害を受ける。とくに呼吸筋麻痺で死亡する。
知覚系は侵されない。消化器症状(-)
1984年、辛子レンコン→ボツリヌス菌集団食中毒。2000年、雪印の低脂肪乳→黄色ブドウ球菌食中毒。
2)感染型
①特徴:ある程度多量の細菌を摂取しなければ発症しない。
・細菌が体内で増殖するのに時間がかかる→潜伏期が長い(1 2~2 4時間)
・発熱(+)38℃、ときに40℃
②種類:腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O157)等
a.腸炎ビブリオ:水様性粘血便、精液臭
b.サルモネラ食中毒:海苔の佃煮様粘血便
c.病原性大腸菌:膿粘血便
かいわれ大根→2002年、腸管出血性大腸菌が検出。かいわれ大根水栽培に使用した地下水が原因だった。
3)食中毒の特徴的症状
①潜伏期:最短はブドウ球菌で3時間、最長はカンピロバクターで2~11日。
②死亡率が高いのは、ボツリヌス中毒と腸管出血性大腸菌(O-157)。
食中毒を起こす細菌は普通は人から人へと感染しないが、O-157は感染することがある。
③高頻度の細菌性食中毒は、サルモネラ、ウエルシュ、カンピロバクター、ブドウ球菌
細菌性食中毒語呂:最近しょっちゅう(細菌性食中毒)猿も(サルモネラ)植える(ウエルシュ)
カンピョウ(カンピロバクター)、ブドウ(ブドウ球菌)
④ウイルス性の急性下痢は、診断は難しいが症状は激しくはなく、自然治癒しやすい。
4)食中毒性下痢に対する裏内庭の多壮灸
①位置:足裏。足第2指根部の横紋から、3分ほど足心側に上がった処。足の第2指
の指球に墨をつけ、折り曲げて足底に墨が転写される部。
②方法:通常は100壮以上。熱さを感ずるまで実施する。すぐに熱く感じるようであ
れば効かない。
③考察:本穴はデルマトームでは八髎穴と等じ断区であって、治効も八髎穴と似てい
る。ただし八髎穴は自分で施灸できないが、裏内庭は自分自身でも施灸できる。
※裏内庭に灸して、熱さを感じなければ食中毒との診断が可能だとの俗説がある。しかし下痢していない者に裏内庭に灸しても半数は、熱く感じない。また食中毒者でも熱く感じる者がいる。