5.不妊症の現代医学的治療
1)問題点
不妊症の現代医療を受けても妊娠率は2 0%前後と低い。高度生殖医療を受けても、
妊娠率は3 0%程度にとどまる。
2)治療法
①排卵誘発剤:無排卵症では高温期はないが、月経がくることもある。これを無排卵
月経とよぶ。排卵誘発剤(ゴナドトロピンなど)による排卵誘発法を行なう。
②人工授精:精液を婦人の子宮内腔に細いチューブを使って注入。成功率2割。成功
例では4回以内で7割が妊娠に成功する。これで妊娠できないならば体外受精を
検討する。
③体外授精:麻酔下で卵胞に針を刺して吸引する。それを培養した後、精子を加えて
授精させる。授精し細胞分裂した卵のうち3個程度を細いチューブを使って子宮
内に注入する。2回以内で8割が妊娠に成功する。平均成功率は4割。
卵管通過障害では、本治療を行う。
6.不妊症の鍼灸治療
不妊症の鍼灸治療は、事前に婦人科専門医にて不妊の原因をまず調べ、針灸治療により妊娠の可能性が高まるかどうかを検討した後に実施する。産婦人科の不妊治療と平行して鍼灸治療を行うことは差し支えない。
1)不妊の鍼灸治験
- 鍼灸の適応
鍼灸治療は、機能的なもの(無排卵、黄体機能不全、造精機能不全)には、よく
効くこともある。数か月~数年の継続治療が必要で、最低3ヵ月は通院させる。 - 治療の着眼点
鍼灸が効いているのかどうかは、最終的に妊娠に成功したか否かで判断するが、
治療が効果的に作用しているかどうかは、次のものが指標になる。
a.長めだった生理周期が、28日型に近づく。
b.高温期が長くなる。
c.投与される薬剤量が減っても、同じ効果が得られる。
d.体表所見の改善骨盤の歪み:腸骨稜の高さに左右差、脚長差
腎虚所見:下腹・腰・足の冷え、小腹不仁(下腹部の空虚)
瘀血所見:小腹急結、小腹硬満
<小腹硬満> <小腹急結>
下腹部に堅硬な抵抗物が左下腹部に擦過痛があり、索状物
あり、膨満感がある。がある。桃核承気湯の証。
桂枝茯苓丸の証。
自宅灸を含めて施灸を続けていると、成功する確率が高い場合には、
「1~3ヵ月を過ぎた頃から、体全体が何となく熱っぽくなり、とくに腰部の灸点付
近を中心に暖かさを覚えるという報告が必ず得られ、その付近をさぐってみると、
以前は氷のように冷えていた所に、温かさが出ている」と記し、この神秘的な温かさ
が現われると、早い者では数週間以内に、平均3ヵ月以内に目的を期待できる確率が
相当高くなる。施灸は妊娠が確認された時点まで行わせる。