突発性難聴
1)症状 ある日突然、片耳が聞こえなくなり、同時に回転性めまいが起こる(めまいを伴わない場合 も多い)。回転性めまいは、前庭神経や小脳で代償されるため、1~2週間で自然回復するが、 難聴は持続する。一側性の高度な感音性難聴で、1回の発作で症状完成する。補充現象陽性
2)原因 原因不明だが、次の2つの機序が考えられ、いずれの場合にも内耳血流量が低下し、結局は 内耳の酸素不足で細胞代謝が低下することによる
①内耳循環障害説 内耳の血行障害、つまり脳底動脈自体もしくはその枝である前下小脳動脈から分岐した内 耳動脈の血栓症→突発性難聴となる。 内耳に流入する動脈は、内耳動脈の1本のみである
②ウィルス感染説 風邪をひいて治って10日ほどしたら出現した難聴・めまいでは、ウィルス感染後に生じ た聴神経炎(第8脳神経)を考える
メニエール病
1)原因と病態生理
内耳で平衡感覚をつかさどるの は三半規管と耳石器である。これ らは身体の動きや位置に伴う、管 内部にある内リンパ液の動きを、 有毛細胞が捉えることで空間にお ける自己の位置や動きを把握して いる。 しかし内リンパの吸収障害が起こると、 内リンパ圧が上昇して内リンパ水腫状態に なる。この時、難聴・耳鳴が起きている。 水腫が一定以上の大きさになると、ライ スネル膜は破綻し、内リンパ液が外リンパ 液に混入し、その瞬間リンパ液の乱流が起 こる。この時、回転性めまい発作が起きて いる。 しばらくするとライスネル膜は自然修復され、内外のリンパ圧は等しくなるので、症状は寛 解するが、数週間~数ヶ月後には、同じ機序で発作を繰り返す。 内リンパ水腫となる原因は、自律神経異常など諸説あったが、2009年12月に、大阪市立大 の山根英雄教授らの研究グループにより、「球形嚢内で微小な炭酸カルシウムの耳石が剥離し て、内リンパ液の通路をふさいだ結果、内耳が内リンパ水腫になって発症する」との真因を つきとめた(内リンパは、蝸牛にある血管条や半規管でつくられ、内リンパ嚢で吸収)。 40~50才台に好発。性差なし
2)症状
三主徴は、めまい(回転性)、耳鳴り、難聴
①水圧が上昇して音を感ずる細胞を圧迫→鼓膜からの振動が伝達しにくい→難聴とくに低音性
②水圧上昇し、膜迷路が膨張し、ライスネル膜が破れる→発作性回転性めまい(反復性) 難聴耳鳴は一側性。難聴、耳鳴が同時に起こる。補充現象(+)
内リンパ水腫自体が発作を起こすわけではない。破裂が起こり、内外のリンパの混合によって平衡感覚 や聴覚に悪影響を与える。水が引けば、すべての症状が消失する。 めまいは2~3時間程度、ときに半日続く(30分程度で治まるということはない)。 めまい発作は、発作性反復性に起こる。めまい発作が治まり、寛解期に移行すれば、難聴耳 鳴も消失する
3)分類
内リンパ水腫が内耳の中の蝸牛あるいは前庭に限局性に生じることもあるとされ、それぞれ 蝸牛型メニエール病、前庭型メニエール病とよばれる。 蝸牛型メニエール病:めまいを伴わずに難聴と耳鳴りだけが反復。 前庭型メニエール病:では難聴や耳鳴りを伴わずにめまいだけを繰り返す