肩甲骨上角で肩甲挙筋付着部
病理:肩甲骨上角は、肩甲骨内上角滑液包炎を生じやすい。 肩甲挙筋は洋服ハンガーのように、ぶらさがる上肢 を引き止める役割をもっている。その起始は肩甲骨 内上角であり、ここがストレスを受けやすい。 肩甲骨内上角滑液包炎では、内上角の骨変形と、 それを取り巻く滑液包の肥厚・増殖・水腫など 生ずる。
病理:肩甲間部は、皮膚面と深部にある肋骨面の隆起が 底面との間にある感受性に富む組織が圧迫されやすい 構造になっている。とくに第5、6肋骨角付近は隆起してい る(=肋骨角)ため、顕著な圧痛が出現しやすい。
上後鋸筋
肩甲骨の裏のコリや痛み。肩甲間部筋や肩甲背神経は痛みがない場合。上後鋸筋は背部にあっても肋間神 経支配(混合性)である。
肩甲間部の脊髄神経後枝刺激
起立筋は脊髄神経後枝支配で痛み・コリの両方を生ずる。また肩甲間部の皮膚は脊髄神経後 枝支配なので皮膚表在痛を感じる。この治療には脊髄神経後枝内側枝刺激が 非常に効果的である。 これは痛みを訴える部位から、斜め45度内上方にある上部胸椎(ときには下部頸椎になる こともある)部の、棘突起の直側の圧痛部へ治療する。
菱形筋は、肩甲背神経(純運動性で痛みは生じない)支配で、 肩甲背神経は腕神経叢から起こる。ただし実際には、肩甲間部のコリが肩甲背神経興奮に 由来することは稀で、むしろ下部頸椎~上部胸椎にかけての脊髄神経後枝または前枝の興 奮によることが多い。 後枝痛興奮の原因は上部胸椎の椎間関節または肋椎関節の機能障害(捻挫やロッキン グ)であることが多い
肋椎関節とは、肋骨頭関節と肋横突関節を合わせた総 称をいう。肋横突関節はロッキングを起こしやすい。 脊髄神経前枝は、胸椎部では肋間神経の別称が ある。上後鋸筋は肋間神経支配(混合性)なので、 本筋の緊張時でも上背部のコリを生ずる
肩甲骨裏面のコリ 前鋸筋のコリ
肩甲骨裏面にある筋は、肩甲下筋と前 鋸筋である。肩甲下筋は肩腱板の一部な ので肩甲骨裏面に自覚するコリがあるな らば肩関節症状があってよさそうなもの である。実際にはあまり関係がないので、 前鋸筋のコリに由来する。 前鋸筋は腕神経叢の枝の一つであり、 腕神経叢症状の一環である。
横隔膜反射
横膈膜隣接臓器(肺下葉、心臓、胃、 肝、膵臓など)に異常が起こると、内 臓の異常反応が横隔膜に波及する。 内臓知覚は元来鈍感であるが、横隔 神経は脊髄神経なので敏感である。患 者は本来の内臓症状よりも横隔膜反応 を中心に愁訴を訴えることが多い。 ①横隔膜中心部:C3~C4脊髄神経支配。このデルマトームやミオトームは頚肩部 を支配し、同部の皮膚過敏と筋コリをもたらす。(C3:頚部C4:肩甲上部) ②横隔膜辺縁部:横隔膜付着部周囲の反応として、T h5~T h12デルマトーム・ミオ トーム反応として、体幹側面(側胸部や側腹部)や起肋部や中背部に痛みやコリ が現れる。
血圧変動 高血圧:高血圧値よりも、血圧変動が肩こりなどの不定愁訴を生む (代表:易変動性高血圧←褐色細胞腫) 低血圧:不定愁訴症候群の部分症状としての低血圧や肩凝り。
直接刺激:肺尖上部の異常(パンコースト腫瘍) ※パンコースト腫瘍:肋骨の上に出た腫瘍の意味。肺尖の最上部にできた癌。肺癌の浸 潤により腕神経叢刺激、頚部交感神経刺激症状(ホルネル症候群→瞳孔縮小、眼瞼 狭小、眼球後退)が出現する。進行すれば診断は容易だが、早期発見は難しい