後頸部を支配する筋と神経
後頸部の筋
針灸臨床を行う上で、コリを生じやすい筋は、頭・ 頸半棘筋と頭・頸板状筋である。
頸神経の分類
頚神経後枝 頸神経前枝C1~C4:頸神経叢 C5~Th1:腕神経叢 後頸部の痛みやコリに関係するのは、混合性神経である頸神経後枝である。頸部神経後枝は 頭・頸半棘筋と頭・頸板状筋をはじめとする後頸部筋を広く支配し、後頸筋のコリと深部痛を 生ずる。また後頸の皮膚知覚を支配し、皮膚痛を生ずる。
後頸部痛と眼精疲労の関係(大後頭神経三叉神経症候群)
三叉神経の下行ループ(三叉神経脊髄路)のうち第Ⅰ枝由来の神経線維と頸神経系(C1~ C3)の一部の神経線維は脊髄上部で同じ細胞に接続している。このため後頭神経の興奮(後頭 部痛、項部痛)が、三叉神経の第1枝に伝搬して、前頭部および眼窩部への関連痛症状(目の奥の 痛みなど)を引き起こす
板状筋・半棘筋は、ともに頸部の後屈に働く深部頸筋群である。この筋は眼精疲労、めま い、肩こりなどによって筋緊張をきたしやすい
頸神経叢の構成
C1~C4の前枝は吻合をつくる。これを頸神経叢とよぶ。頸神経叢からの神経枝は表在性に現れる。
頚神経叢から出る主要枝 ①小後頭神経(C2~C3前枝):上行し、頭部の皮膚支配。知覚性。 ②横隔神経:横隔膜へ分布。運動性支配。 ③直接筋枝:主として僧帽筋 胸鎖乳突筋の運動性支配。
腕神経叢の構成
C5~C8とT h 1神経の前枝は吻合をつくる。これを腕神経叢とよぶ。腕神経叢の走行 は、①肩関節部、②肩甲間部、③上肢部に大別できる。 ①肩関節部へ行く神経 肩甲上神経筋枝(コリ):肩甲上部(棘上・棘下筋) 関節知覚:肩関節部の痛み 肩甲上神経の皮膚知覚支配はなし。 腋窩神経筋枝(コリ):後腕のつけね(三角筋後部) 知覚枝(上外側上腕皮神経痛):上腕外側 ②肩甲間部へ行く神経 肩甲背神経筋枝(コリ):肩甲間部(肩甲挙筋、大小菱形筋) 肩甲背神経の知覚支配はなし。 ③上肢へ行く神経:筋皮、橈骨、正中、尺骨神経など
腕神経叢(背面からのアプローチ)
腕神経叢は、前斜角筋と中斜角筋に挟 まれた形で存在するので、間接的に腕神経叢に影響を与える。
肩甲間部の筋は三層になっており、表層から順に僧帽筋→菱形筋(部位によっては肩甲挙筋) →起立筋になる。
僧帽筋は副神経と頚神経叢筋枝支配、大小菱形筋と肩甲挙筋は肩甲背神経支配であり、いず れも純運動神経なので痛むことはないが、肩甲間部筋コリを生ずる。