肩こりの定義
肩甲上部、特に僧帽筋肩甲帯諸筋の緊張状態により、自覚的にその部の疲労感、張る感じ、痛 み、鈍麻感を自覚し、圧迫すると痛みがあるか快感を伴うもの。 頸・肩・背中がこるとはいっても、腰がこるとはいわない。腰が張る、ふくらはぎが張ると いった表現はするわけだが、肩こりも同様に、江戸時代までは肩が張ると表現をした。「肩が凝る」 とは明治・大正期に活躍した夏目漱石による造語である。 解剖学用語の肩は、肩関節部をさすので、肩井付近のコリは肩甲上部とよぶのが妥当である。 肩こり症という語は適切でない。肩こり性とよぶのが正しい。 肩こり性の有無は、自覚症のみで判断する。実際に肩甲上部周囲の筋のコリの有無は問題ではない。
肩こりの局所治療と刺激量について
肩凝りの局所治療は、コリのある筋自体、およびコリをもたらしている運動神経線維に対する 刺針施灸が広く行われている。 なお、このような肩凝りの局所治療は、患者の針に対する感受性を勘案することは当然である が、太い針によりドスーンとした針響を与える方が効果的になる。すなわち疼痛物質による刺激 伝達の場合、脳は、組織が損傷したことを知り、血液を集めて治そう(=自然治癒力)とするの だが、疲労物質で神経が刺激を受けた場合、それはC線維による刺激伝達なので局在が不明瞭な ので、自然治癒力が働かない状態になっているからである。 そうした場合、コリの部に針を刺入していくと組織が損傷し、細胞から発痛物質が出ることで、 脳は治すべき場所を知り、自然治癒力を働かすことになる。
後頭下筋の構造
後頭下筋とは項部の最深部にある短い筋群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜後・下頭斜筋) の総称をいう。後頭下筋はC1頸神経後枝(=後頭下神経)の純運動性支配であり、重圧感は生 じても痛むことはない。頭の可動域が減り、顎を引いて自分の臍を見る動作がしづらくなる。後 頭下筋のコリは、緊張性頭痛の原因をつくりやすい 本人が無自覚であっても、このコリが原因で不眠症や気分不快となることも多い。 項部深部の緊張を弛めるには、後頭下筋に達するような深刺が必要である
頸部ROM:前屈と回旋は60度。後屈は50度。 このうち、後頭骨-環椎間は、前屈10度・後屈25度。環椎-軸椎間は回旋45度
後頸部
特徴
後頭下筋(項部重圧感) 大後頭神経(大後頭神経痛) 小後頭神経(小後頭神経痛) 僧帽筋緊張僧帽筋緊張椎骨動脈刺激(めまい) 共通点頭板状筋、頭半棘筋刺激(後頸部コリ)
頭半棘筋中に大後頭神経がある。
適応
①頭板状筋や頭半棘筋の筋緊張 ②深項筋の緊張、およびこの筋緊張が起因となって派生する不眠 ③大後頭神経痛。 大後頭神経は三叉神経第1枝と連絡しているので三叉神経第1枝支配領域(眼や鼻) にも影響を与えることができ、眼精疲労や鼻症状にも多用される。