中髎刺針適応の整理
①仙骨神経後枝および仙骨神経叢(L1~S3)刺激点
坐骨神経痛、仙腸関節捻挫の治療点として→殿部後方へ針響
本用途では、S2の次髎を使うことが多い。
②骨盤神経刺激点(S2~S4):下部骨盤内臓器の副交感成分治療点→針響なし
③陰部神経刺激点(S2~S4):泌尿・生殖器、婦人科臓器の運動・知覚異常の治療点
→陰部や肛門へ針響
3)陰部神経の機能と治療点
内臓全般は自律神経が支配しているが、意志によりある程度制御ができる部分は脊髄支配である。その脊髄神経とは呼吸調節を可能とする横隔膜神経(C3~C4)と、大小便の我慢を
可能にするのは陰部神経(S2~S4)の運動線維による。
陰部神経の知覚成分に関しては、生理痛、排尿痛、痔痛などの治療で重要となる。
陰部神経が重要になるのは、泌尿器科と婦人科。陰部神経を刺激するには中髎でもよいのだが、実際には次の2つの方が治療効果に確実性がある。
①中極刺針
陰部神経の終枝である陰茎背神経を刺激できるので、針響は亀頭に至る(女性では陰核
背神経を刺激して陰核に至る)。
陰部神経は、肛門の知覚や運動を支配する会陰神経が分かれるので、中極や関元からの刺針は、肛門に針響を与えることも原理的にはできるはずだが、実際にはペニスに響いてしまうことが多い。下腹部に刺針して肛門に響かせることが、便秘治療の秘訣だと記している文献が多い。
②陰部神経刺針
4)S状結腸~直腸の治療ポイントまとめ
骨盤神経(中髎)
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骨盤内臓
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陰部神経刺針(中極)
便秘治療では、上記のほかに、左下行結腸~S状結腸に対する直接刺激が行われる。
これを内臓刺と称する。
鍼灸院での下腹診察と鍼灸治療
急性腹症は緊急外科手術が必要なので、疑いがあれば即座に病院転送する。ただし独歩して来院できない状態なので、鍼灸の場で取り扱う機会はまずない。
下腹痛にも強い痛みと鈍痛があるが、鈍痛で慢性的な痛みが鍼灸に来院する。すでに
医療にかかり、診断も一応ついているケースが大半である。医療にかかっても改善しな
い場合(自律神経がらみや難病)や、同様の症状を繰り返す場合に鍼灸に来院する。
下腹部痛の診断ツリー
慢性下腹痛(独歩来院)
バイタルサイン異常→専門医へ
筋性防衛(+)、ブルンベルグ徴候(+)→専門医へ
癌疑診基準→専門医へ
Y 痛む部を自分の指頭で示せるN
体動時に痛む内臓症
右下腹部痛→回盲部ガス 慢性虫垂炎
体壁疾患
下腹部中央痛:排尿症状(+)→泌尿器疾患
月経・不正出血→婦人科疾患
左下腹部痛:下痢(+)便秘(+)→過敏性腸症候群
便秘(+)腹痛(-)→常習性便秘
血便(+)→潰瘍性大腸炎、大腸癌
重篤所見は、不正出血と血便である。ともに悪性疾患を考慮し、原因追及する必要がある。