③軽症静脈瘤 a.穿孔枝(側枝)静脈瘤 伏在静脈につながる、主にふくらはぎの枝の一部が膨らみ静脈瘤になったもの。ふくら はぎの部位にできることが多い、伏在型に比べると範囲が狭いことが多く、症状も軽い。 b.網目状静脈瘤 皮下の浅いところにある、2~3mmの細い静脈が拡張してできた静脈瘤。 c.クモの巣状静脈瘤 赤い血管がクモの巣のように皮膚にひろがって見える。皮膚に近い直径1mm以下の細い 静脈が拡張した静脈瘤。この段階では特に治療を要しない。 4)西洋医学治療 ①圧迫療法(軽症例):弾性包帯や医療用の弾性ストッキング使用。脚を圧迫(足先 を強く締め付け、脚の付け根は弱く圧迫)して静脈の鬱血や逆流を緩和(使用中 止で元に戻る)。 ②硬化療法(中症例):静脈瘤内に硬化剤を注射した後、圧迫して静脈瘤を癒着・硬 化させて静脈瘤を消失させる。血液が流れなくなった血管は徐々に退化し、やがて静 脈瘤も消える。患者にとって負担の少なく、通院でも治療できる。 ③エンドレーザー法(重症例)「静脈の範囲内での」という意味。まず超音波検査で静脈血逆流部位 を特定する。次に正常静脈部を切開して細いファイバーを患部まで到達させ、レー ザーで血管を焼いて閉鎖する。その結果静脈の逆流は止まり、静脈瘤は縮小消失する。 1999年に開始された画期的な治療で、わが国では2011年から保険適用になった。従来の伏 在静脈を抜去する方法と比べ侵襲性が少なく、入院も不要となった。 5)鍼灸治療 壊れた静脈弁が原因部位であり、静脈瘤はその結果部位である。壊れた弁に対しては治療の 方法がない。しかしエンドレーザー法は、静脈瘤部に至る表在静脈を閉塞するという方法をと る。鍼灸治療は、下肢静脈瘤局所を施術することに終始している以上、影の薄いものとなった。
①静脈瘤部への火針
タングステン合金製の針(ステンレス製では火 熱に耐久性がない)を、アルコールランプで赤くなるまで加熱し、素早く速刺速抜している。 この時、患者はさほど熱さを感じない。火針後は針孔に、痒み・ほてり・赤みが出るが、し ばらくすると消失する。 小さな静脈瘤であれば消失することがあるが、大きい瘤は少し縮小する程度。自覚症状は 治療数回で消失するという。静脈血管を一部、火で凝固させることで、こ れ以上の静脈瘤の進行を防ぐ意味がある。ただしタングステンの針は入手困難なので、ステ ンレス中国針の1インチ28号(和針12番相当)を数本用意し、針が赤くなるまで火で熱し、 静脈瘤局所に数回速刺速抜(針は非常に脆くなるので1本の鍼で複数回の刺針はで きない。細い鍼の使用は禁止)。痛みに対して、やや有効との印象をもつが、静脈瘤を縮小 する効果はないようだ。なお静脈瘤部へ刺絡すると、広汎な皮下出血が生じるので禁忌とす べきだろう。 ②妊娠中や出産後に静脈瘤が増悪した女性の場合 妊娠中や出産後に静脈瘤が増悪した女性の場合、骨盤内静脈の鬱血が原因で、下肢静脈の 環流が不良となっているケースもあり、仙骨部や臀部の施術を加えた方がいいとの報告があ る。静脈瘤の原因の一つに、内腸骨静脈からの逆流が知られている。いわゆる骨 盤内瘀血の処理ということであり、針灸的発想である。一方、妊婦の10~15%に「静脈瘤」 が出現するが、出産後に80~90%は、自然に消失することも知られているので、この針灸治 療が特異的に効果あったとはいいがたい。