顎関節症
顎関節の特徴
顎関節とは、下顎骨関節突起の下顎頭と側頭骨下顎窩の つくる関節である。下顎骨関節突起の前方には側頭筋の起 始である筋突起がある。 顎関節は、外耳道入口の前方にあるので、指をその部分 にあてて口を開閉するとクリクリ動くのがわかる。 開口の初期は蝶番関節として回転運動し、さらに大きく 開けると前下方への滑走運動を起こす。この時、骨の摩擦 による破壊を防ぐため、関節円板が 存在し、支点として安定するために 関節円板は中央が薄くなった凹レン ズ状の形をしている
2.咀嚼筋と顎二腹筋
咀嚼筋は側頭筋、咬筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類があり、いずれも三叉神経第Ⅲ枝 が運動支配する。 側頭筋、咬筋、内側突筋の3筋の共通機能は、閉口 (顎を上に上げる)であるが、外側翼突筋と顎二腹筋の機 能は、開口(顎を前に突き出す)である。 顎二腹筋は、下骨を境として、前腹が三叉神経第Ⅲ枝の 枝の下歯槽神経の運動支配、後腹が顔面神経運動支配。 顎二腹筋は舌骨を挙上し、舌骨固定時には下顎骨を後下 方へ引く作用がある。 起始停止機能神経 側頭筋側頭骨下顎骨筋突起下顎骨を後上方に挙上 閉 咬筋頬骨弓口下顎骨を前上方に挙上 咀下顎枝筋 嚼内側翼突筋蝶形骨下顎を前上に挙上、顎を横にずらす三叉 筋神経 外側上頭関節円板関節円板を前方に引く 翼突筋蝶形骨 下頭下顎頭開顎関節の滑走運動、左右に動かす 口 前腹下顎骨筋 顎二腹筋舌骨下顎骨を後下方へ引く 後腹胸乳筋顔面
3.顎関節症
1)概念 咀嚼や開口時の顎関節とその周囲の疼痛、開口障害と開口時雑音などを主体とする顎関節症 状の総称。安静時の自発痛(-)。9割は自然治癒するが、残り1割は慢性化するとされる
2)自覚症状:3大症状は、開かない・痛い・音がする
3)病態生理と分類
①咀嚼筋の障害(咬筋、側頭筋)→顎関節症Ⅰ型 痛みを我慢すれば大きく開口可能。緊張して短縮している咬筋、側頭筋の伸張痛である。 顎関節部の圧痛(-)、開口時雑音(-)
②関節円板の脱臼→顎関節症Ⅲ型 この障害のみであれば、顎関節部痛はない。20歳代女性に多い。開口制限あり。最大開 口で縦に指が1~2本しか入らない(正常では3~4本入る)。 耳門(顎関節部)の圧痛(+)、または外耳口前壁部の圧痛(+) 大きな開口時、関節円板が正常位置に戻るタイプでは、カックンという音を発する。 開口とは関係なく常に関節円板がずれているタイプでは、関節音はしない
③変形性顎関節症→顎関節症Ⅳ型 顎を動かすと、シャリシャリ、ゴリゴリ音がする。口を開ける時も噛む時も痛い (耳介側頭神経痛)。中年以降の女性に多い
<顎関節症の分類> 1996年、日本顎関節学会 ①顎関節症Ⅰ型筋肉の障害 ②顎関節症Ⅱ型関節包や靱帯の障害 ③顎関節症Ⅲ型関節円板の障害 ④顎関節症Ⅳ型変形性関節症 ⑤顎関節症Ⅴ型その他 実際には、上記の合併型が多い。 針灸適応はⅠ型だとされる