背神経への刺激目的で、中極や大赫の刺激がよく行われる。陰茎背神経は、陰茎から亀頭に
達するので、針響も陰茎先端まで得られやすい。
①勃起障害に中髎刺針が有効
心因性9例、内分泌性8例、静脈性3例、糖尿病性2例、神経因性1例、前立腺症1例の
計26例。早朝勃起は全症例が改善した。性交時の状態は65%が改善した(心因性33%、
内分泌性88%、静脈性100%、糖尿病性50%、それぞれ改善したが、神経因性その他
は不変)。予想外なことに、心因性のEDには有効率は比較的低く、その逆に原疾患の不随症
状としてのEDに有効率は高かった。
註)これはバイアグラと同様の傾向である。中髎刺激は、上位勃起中枢とは無関係だとい
う点でバイアグラの適応症に似ている。ただし治効機序はまったく異なる。
②EDに対する中髎刺針で有効だが、効果はバイアグラに及ばない
ED患者26名に対し、2寸#8の針を中髎に5㎝刺入し、回旋刺激を10分間施行。治療は週に1回
で、平均11回施術した。著効と有効を合わせると有効率は62%だった。有効例は、心因性(著効33%)
よりも、内分泌性(著効88%)や静脈性(60%)の方が高かった。
しかしバイアグラの有効性は50mgで70~80%で、重篤な副作用もみられないことから、針治療よりも
バイアグラ内服の方が効果的である。バイアグラが効果なかったという者の大半は、内服方法に誤解が
あるためで、服薬指導と数回の針灸治療で改善させる。
③曲骨から下方にむけて深刺
曲骨や中極から恥骨方向に斜刺深刺すると、容易にペニスに針響を与えることができる。
これは陰部神経の枝である陰茎背神経を刺激した結果である。陰茎背神経は、陰茎から亀
頭に達しているので、こうした現象が起こる。
陰茎背神経は、外陰部や会陰部の知覚や、球海綿体筋を含めた骨盤底筋群の収縮
に関わる神経で、この神経切断により性交障害が生じることや、外陰部への性的刺
激により、勃起が誘発されること、射精時に球海綿体を含めた骨盤底筋の収縮が起
こることから、この神経が勃起・射精にを含め性機能全般に深く関わっている。
陰茎背神経ブロック点は、ペニス基部の上外方2点
であるが、施術部位としては問題があろう「勃起障害のない男性に曲骨から刺針をすると、ペニスの先まで針響を感じるが、重いEDでは針を刺入した部
位のみの刺激感のみになる。しかし繰り返しの治療で、ペニス先端部近くまで針響が届くようになる」記している。