眼精疲労
機能性の眼精疲労の分類
調節性眼精疲労と筋性眼精疲労 調節性眼精疲労:毛様体筋の不全←内眼筋障害による 筋性眼精疲労:輻輳不全、斜視←外眼筋障害による ②頭位固定の疲労・・・・項筋とくに後頭下筋の疲労
精神性眼精疲労・・・・視覚情報処理の疲労(大脳の疲労)
二次性の眼精疲労と全身疾患に伴う眼精疲労の原因 単なる眼精疲労であれば、目を休めれば回復するが、休養しても治らない場合には器質性疾 患を疑う。針灸に来院する眼症状で最も多いのは眼精疲労が群を抜いて多く、その大部分は 頸肩のコリの一環として来院する機能性のものであるが、次の疾患を除外診断すべきである
眼痛(+)→慢性緑内障 よく見えない目がかすむ→白内障(R/O 糖尿病性) ぶどう膜炎←サルコイドーシスによる 眼底出血← 糖尿病性網膜症による 像が歪む、像の一部欠損→中心性網膜炎、網膜剥離 目がチラチラする→ 飛蚊症(R/O 網膜剥離、ベーチェット病) 目の乾燥感→ドライアイ(R/O シェーングレン症候群) 機能性眼精疲労、仮性近視、心身症
眼科の針灸治療 眼科領域の針灸治療は、疾患に関係なく一律に、局所・近隣刺激として眼の周囲やこめかみ部、 あるいは項部を刺激することで、眼周囲筋の緊張緩和と血流改善、そして交感神経優位に導くこと を狙いとしている
眼精疲労の針灸治療 休息しても改善しない眼精疲労では、器質的疾患が疑われるので眼科専門医に依頼する。 ただし眼精疲労の大部分は針灸の最適応症である
ドライ・アイ
涙の産生と排出 涙は涙腺でつくられ、排泄溝を通って眼球表面に流出する。その10 %は眼球表面から蒸発 し、90 %は涙路(上下の涙点→上下の涙小管→涙嚢→鼻涙管)から鼻腔へと排泄される
涙の役割は、①眼表面を乾燥から守る、②角膜への酸素と栄養を補給、③目の表面にある汚 れや、細菌を洗い流す、などである
涙液膜の三層構造
①外側:薄い油膜のような「油層」 睫毛の生え際にあるマイボーム腺より分泌。瞬きで上下の瞼がくっついて離れる時に涙の 表面に油膜をはる。涙の水分蒸発防止の役割
②中間:栄養分と水分をたくさん含んだ「水層」 涙の主成分。主涙腺で産生され、瞬きによって眼の表面に運ばれる。瞬きには、角膜(三 叉神経第1枝支配)を刺激し、涙腺からの涙の分泌を促す作用もある。汚れた涙を涙点(目 頭にある涙の排出口)へ運ぶのも、瞬きの働きである
③表面:タンパク質でできた粘りのある「ムチン層」 結膜にあるゴブレット細胞から主に分泌。水層を眼の表面にとどまらせる接着剤のような 役割。目やにの主成分は、ムチンである。
ドライアイの原因
眼精疲労を訴える者の6割はドライアイである。ドライアイはその原因によって大きく二つ のタイプに分けられる。
①涙液蒸散型 涙の蒸発量が増える。軽度のドライアイに多い。マイボーム腺の分泌量低下であり、涙分 泌量は正常。分泌減少する者は高齢者に多い。マイボーム腺が分泌減少する原因は、油の性 状が変化して固まりやすくなり、ときには腺が詰まることもある。 この改善の目的で行う眼瞼マッサージは、油が固まっていると効果がない。固まった油を 溶かすには、40 ℃程度のおしぼり(または遠赤外線。赤外線ではまぶしすぎる。マイクロウ ェーブは禁忌)で、眼瞼を5分間以上温める方法がある
②涙液減少型→シェーグレン症候群が代表。
ドライアイの症状 「眼が乾く」と感じる人は意外に少なく、はじめは、なんとなく目の違和感、目の疲労感 として自覚症状が出現する。めやに、流涙、ゴロゴロ感、乾燥感、かゆみ、視界がかすむ、 重たい感じ、まぶしい感じ、不快感、充血なども出る
ドライアイの針灸治療 瞬き数は交感神経緊張で減少することが知られている。またたき回数は、読書では通常の1/2 に、車の運転やパソコン操作では、通常の1/4 にまで減少する。このような交感神経緊張性涙液 抑制が針灸適応になる