③客主人から頬骨弓下へ斜刺深刺
仰臥位。寸6の#5で、30 度の角度で客主人から耳垂方向に斜刺、4㎝ほど深刺した後、50
回前後雀啄する。2㎝前後刺入すると針先が骨にぶつかったような感触が得られる。その場
所で雀啄を続けていると急に柔らかになり所定の深度まで達することができる。
トラベルは、開口させ側頭筋を伸張させた状態で麻酔注射をすることを推奨している。刺針した後、刺針したまま口の開閉を数回行わせた後に抜針する。
4)頸部交感神経刺激(肩中兪深刺)
胸腰部における脊髄神経と交感神経は1:1の関係になっている。たとえば胃の交感神経支
配はTh 5~ Th 9なので、交通枝を介してTh 5~ Th 9脊髄神経デルマトーム支配領域に反
応が出現する。しかし交感神経はTh 1~L2の間に所属しているにすぎず、頭顔面部や上肢
の交感神経反応はTh 1デルマトーム反応、または頸神経節反応として出現する。
・肩中兪深刺
肩中兪に2寸針を用いて、4㎝ほど深刺して1分間ほど手技を続けると、刺針側の眼の
疲労が改善される。
星状神経節に影響を与えたことにより、眼を支配する交感神経が興奮することによるものだろう
2.ドライアイの鍼灸治療
瞬き数は交感神経緊張で減少することが知られている。またたき回数は、読書では通常の1/2
に、車の運転やパソコン操作では、通常の1/4 にまで減少する。このような交感神経緊張性涙液
抑制が針灸適応になる。
治療は三叉神経涙腺枝への働きかけを行う目的で上眼窩内刺、涙点刺激目的で睛明刺を行う。
本治的には、交感神経緊張状態の是正すなわちストレス改善目的で天柱や百会に置針する。
ドライアイは眼精疲労の原因にもなるので、眼精疲労と同様の鍼灸を考える。眼精疲労の代表
穴は、天柱、百会、太陽である。太陽は側頭筋刺激として、緊張性頭痛の治療としても用いるこ
とが多い。
3.麦粒腫の鍼灸治療
1)二間の施灸
眼自体は正常。瞼の病変であって眼ではなく、皮膚の病
変と捉える。ゆえに古典的には経絡的には肺・大腸経病変
となる。「麦粒腫に対する二間の灸」は鍼灸師の間では広く
知られており、おおむね次のことがいえる。
①麦粒腫というのは、おそらく外麦粒腫のことである。
②二間穴は標準二間と、沢田流二間があ
るが、ともに同程度の効果がある。
③二間は、健側治療、患側治療とも同程度の効果がある。
③二間の針は、効果が乏しい。
④せんねん灸でも、有痕灸でも効果がある。有痕灸では
艾炷の大きさや壮数ともさまざまであるが、効果優劣
は不明である。
⑤腫脹しているタイプは腫れが引き、膿が出ているタイ
プは排膿を促進させる。