1)病態
単にテニス肘という場合、バックハンドテニス肘をさす。テニスのバックハンドでボールを打つ際、ラケットに加わる衝撃が、主として前腕の伸
筋腱(とくに長・短橈側手根伸筋腱)付着部である上腕骨外側上顆に力学的ストレスを生ずる。この反復により前腕伸筋腱の骨付着部および骨に炎
症や断裂が生じる。バックハンドで打つたびに痛みが出る。主婦では雑巾絞りで起こりやすい。フォアハンドテニス肘はテニス上級者に多い。
トップスピンサーブやストロークの際の手首のスナップが原因となる。痛む部位はゴルフ肘様となり、前腕屈筋群に負荷がかかり、その起始部であ
る上腕骨内側上顆部痛が生じる。長・短手根伸筋の起始は上腕骨外側上顆で、停止は中手骨底。作用は手関節の伸展と外転。
すなわち手関節の背側負荷によりテニス肘を生ずる。なお腕橈骨筋は、上腕屈筋に分類される。本筋は肘関節屈曲作用なので、テニス肘とは無関係。
肘関節ROM:屈曲145°、伸展5°
2)バックハンドテニス肘の症状
手関節背屈時、前腕の回外時(前腕回外筋にも負荷がかかるため←ドアノブを回す、タオル
を絞る)の上腕骨外側上顆部痛。※前腕回外:肘をつけ、手掌を表にする動作
ステージ1 テニス中に痛みはないが終了後に痛む
ステージ2 テニスのプレー中に痛み、プレーに支障をきたす
ステージ3 日常生活でも痛み、テニスはできない
3)バックハンドテニス肘の所見
外側上顆の腱起始部圧痛(++)、伸筋筋腹(おもに長・短橈側手根伸
筋)の圧痛
①チェアテスト(+)
肘伸展、前腕回内位で、4㎏程度のもの(治療院では丸椅子)を持
ち上げた際、肘部に痛みが出れば陽性。
②トムゼンテスト(+)(=コーゼンテスト)
患者の前腕を固定し,こぶしをつくり、手関節を背屈させ
る。この際、検者は患者のこぶしの背側に圧をかける。外側上
顆部に疼痛誘発すれば陽性。
③中指伸展テスト(+)
手掌を下にして肘以下をベッド面につける。検者は被験者の中指の先を押圧しながら
患者に中指を伸展するよう命じる。この時、肘部に痛みが出れば陽性。
4)治療と予防
①痛みがとれるまでテニスを休止
②前腕の最も太い場所にサポーターやテーピングをして練習、終了後は患部を15分間冷罨法。
5)テニス肘の鍼灸治療
①鍼灸治療の方法
a.鎮痛と血行改善を目標として外側上顆の筋付着部への運動鍼を行う。
曲池(大腸):肘を曲げてできる肘窩横紋の外方、上腕骨外側上顆の前。
b.前腕伸筋群の短縮が、外側上顆に加わる腱付着
部の牽引力増強を引き起こしている。
→手掌をベッドにつけ、中指の過伸展を指示す
る。術者はこれに抵抗を加える。この状態で、前
腕伸筋群の圧痛点を探索して刺針する。
c.頸部の脊椎症が前腕伸筋群短縮→頸部C6神
経刺激を目的に、天鼎、肩中兪刺針