②右心不全
右心不全では、右心室に環流できない血液が体循環に溜まり、前方負荷の結果として
体循環鬱血症状(全身浮腫、外頸動脈怒張)を呈する。
右心不全の徴候:全身浮腫、肺性心、COPD
COPDを、一昔前は、COLDとも称した。
a)肺性心
肺疾患で肺血管抵抗増大している場合、右心室は強引に血液を肺に送り込もうとする
ため、右心室肥大する。すなわち肺疾患によって生じた右心肥大を肺性心とよぶ。
COPDの程度がひどく、長期入院しているような者は、すでに肺性心である。
2.偽の心疾患の鍼灸治療
心疾患が胸筋のコリをもたらすこともあれば、反対に胸筋トリガーポイント活性により、不整
脈などの心電図上に病的所見をみる場合がある。そのTPは、心疾患患者の60%以上にみ
られるという。
咳嗽・喀痰の鍼灸診療
1.下気道・肺疾患
鍼灸単独での施術乾咳湿咳
上気道疾患(咳は首から出る感じ) ○ ×
下気道疾患(咳は胸から出る感じ) × ×
針灸に来院する下気道・肺疾患とは、発熱なく重篤感もないこと、慢性症であること、医師に
かかっていても症状が満足いくほど改善しないこと、などの要件を満たすものであろう。
慢性咳嗽の鑑別ツリー
慢性の乾性咳
次第に増悪傾向:初期の肺結核や肺癌(医療受診)
咳はノドから出る感じ:慢性喉頭炎→鍼灸単独治療可
咳は胸から出る感じ
慢性の湿性咳
まず医療受診し病名を明らかにする
感染症→ 現代医学治療単独
↑
非感染症重篤感(+)
重篤感(-)→現代医学+鍼灸治療併用可
咳嗽喀痰の診断は感染症が絡むので難しく、診断がつかなければ治療可能かどうかはわから
ない。しかしながら上気道疾患で乾咳(痰の伴わない咳)であれば、喉頭炎やかぜ症候群なの
で、鍼灸単独で診ることは可能だといえる。それ以外では医師の診断から判断する。
2.慢性閉塞性肺疾患と慢性拘束性肺疾患
1)概念と分類
慢性の呼吸器障害は、閉塞性と拘束性に大別される。
慢性閉塞性呼吸障害とは、気道の狭窄により空気の出入りが悪い状態で、ストロー
を口にわえて口呼吸する状態にたとえられる。この代表疾患には、慢性気管支炎・
気管支喘息・肺気腫の3疾患があげられる。
慢性拘束性呼吸障害とは、空気は十分肺胞まで入ってくるが、肺胞の伸展性低下に
より、十分には酸素を取り込めず、二酸化炭素を排出できない状態で、胸郭にきつい
コルセットを巻いて呼吸している状態に例えられる。代表疾患は、肺線維症・間質性
肺炎・肺炎が代表的であるが、他にも多数あるので、閉塞性肺疾患の3疾患以外は拘束
性と覚えるのがよい。
2)慢性閉塞性呼吸器疾患の特徴
肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息は類似した面があり、同時に合併することも多いので
一括して慢性閉塞性肺疾患(COPD)とよばれる。
最近では咳、痰、息切れがあるものをCOPDと一括して呼ぶようになった。
COPDの最大危険因子は喫煙である。(1日20本以上のタバコを20年以上)。
検査:肺活量は正常(ないしやや低下)、一秒率は低下
一秒率:一秒率とは、<一秒量/肺活量×100>で求める。90%以上が正常。一秒量とは最大吸気後、一
気に急激に息を吐き出す時、最初の一病間にはき出すことのできる呼気量をいう。閉塞性肺障害では、
空気の通路が狭まっているので、一秒率は低下(90%以下)するが肺活量は正常である。
拘束性肺障害では一秒率は正常だが、肺活量は低下する。