②治療効果
局所性変化は腱炎であることが多いが、重症例では微細断裂や骨膜炎のこともある。
鍼灸治療は、腱炎であれば効果的であり、数回の治療で症状消失する。効きが悪いもの
は週3回の治療を1か月しても、症状半減にまでは至らない。治療に反応しにくいものは、
ギブス固定が必要である。
5.ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
1)病態
効き腕とは反対側の肘(右効きの者では左肘)に生ずる。ゴルフでボールを打つ際、左肘を
のばし手関節を強く背屈・回内するため、手関節を屈曲作用のある前腕屈筋群に共通腱の起始
部である上腕骨内側上顆部の腱や骨膜に炎症が起こる。フォアハンドテニス肘ともよぶ。
2)症状:上腕骨内側上顆部の運動時痛
3)現代医学的治療
テニス肘と同じ
4)鍼灸治療
①右図の要領で、上腕骨内側上顆部と、上顆部に付着する前腕屈筋群の筋緊張点に刺針。
②C7神経根症としての治療
6.野球肘
1)病態
小学校高学年から中学校低学年までは肘の障害が多い。成長期の障害の特徴は、骨端線
(骨が成長していく力学的脆弱部)があるために、骨の障害を生じやすいことである。
投球動作によって生ずる肘関節の障害を総称して野球肘とよぶ。投球の加速期におい
て、肘内側には牽引力が加わり、外側には圧迫力が加わる。
これらのストレスによる軽微な損傷の繰返しにより障害が生ずる。
2)現代医学での治療
まず投球動作を中止させる。温熱療法や関節可動域改善訓練、外用剤を用いての肘のスト
レッチや筋力強化訓練を指導する。痛みがひどい場合、薬物療法としては短期間の非ステロ
イド系抗炎症剤を処方する。
このような治療により「肘の内側部の障害」は殆ど完治するが、「肘の外側部の障害」で
は、保存的な治療期間が長く(1年以上を要する事もある)、中には手術的治療が必要となる
ケースもある。
3)内側野球肘の病態と針灸治療
一連の投球動作によって、牽引力や張力および収縮力が繰り返しかかることによる肘の内
側、内上顆骨端線の損傷。
いわゆる筋付着部炎として、上腕骨内側上に付着してい前腕屈筋群起始に運動針を実施。こ
れは運動痛に対して有効であるが、筋の微細損傷を治した訳でなはいので、1~2ヵ月の投球
中止が必要。比較的容易に完治できる。
4)外側野球肘の病態と針灸治療
投球動作により、肘関節に圧迫力や回旋力が繰り返し加わるため、橈骨頭と上腕骨小頭が衝
突し、上腕骨小頭の軟骨に血行障害が起こる。カーブなどの変化球を投げることで橈骨の回旋
は増強され進行する。やがて離断性骨軟骨炎や関節内遊離体(関節ネズミ)を発生し、肘の
完全伸展不能となる。軟骨破壊が生ずると完治は困難で、保存療法の期間も長くなり(1年以
上もありえる)、手術が必要になるケースもある。
離断性骨軟骨炎
腕橈関節の骨軟骨が変性し壊死に陥り、次第に周囲から分離し、遊離体(関節鼠=関節包内の小骨片。遊
離体が腕橈関節内に挟まると急に関節が動かなくなる)となる。10~20歳少年野球の選手に好発。