症状としては、まぶたが重い、夕方になるとまぶたが開かない。眼瞼挙筋を余計に収縮さ
せているために目の奥が痛い。歯を食いしばってまぶたを開けているので咀嚼筋の疲れ、痛
み、歯が浮く、顎関節の症状がおこる。開眼時には、眼瞼挙筋が働かないので、代償として
ミューラー筋の収縮を強いられるので、頭顔面部の交感神経緊張状態にもなる。
腱膜性眼瞼下垂と頭痛と肩こりの関連:腱膜性眼瞼下垂になると、挙筋腱膜の裏にあって上
眼瞼挙筋と瞼板をつなぐミュラー筋に荷重が加わり、ミュラー筋が伸ばされる。ミュラー
筋は交感神経の刺激で収縮するが、逆にミュラー筋が伸ばされると、交感神経緊張状態に
なる。
また無理に眼瞼挙上させるため、前頭筋や肩や首周囲の筋群も収縮してくるので、頭痛
や肩凝りが起こることもある。
2)動眼神経麻痺
上眼瞼挙筋(動眼神経支配)の麻痺により、一側の眼瞼下垂が起こる。同時に、毛様体筋
(動眼神経支配)麻痺により散瞳になる。。
3)ホルネル症候
眼に対する交感神経支配の消失状態。相対的に頸部交感神経機能亢進により縮瞳になる。
また、交感神経は上瞼板筋を支配するので、交感神経支配が弱くなれば眼瞼下垂になる。
ホルネル症候の3第徴候は、縮瞳・眼球後退・眼裂狭小で、軽度の眼瞼下垂も出現する。
ホルネル症候群は、眼の交感神経機能低下や星状神経ブロック時に出現する。星状神経節ブロックは、
バレリュー症候群時の頸部交感神経刺激症状の改善目的や、顔面神経麻痺時の頭蓋内血流改善目的で実施
される
4)重症筋無力症MG
全身骨格筋の筋力低下。とくに両側性に眼瞼下垂が起こる。瞳孔は正常。
代表的な眼科疾患
1.麦粒腫
1)眼瞼の腺の種類と機能(本章p8 図参照)
眼瞼縁毛包脂腺(ツァイス腺):睫毛に潤滑油としての脂を分泌
睫毛腺(モル腺):アポクリン汗腺を分泌
眼瞼内部:瞼板腺(マイボーム腺):角膜に潤滑油として脂を分泌
2)外麦粒腫
ツァイス腺またはモル腺の急性化膿性炎症。単に麦粒腫といえば外麦粒腫をさす。眼瞼の充
血・浮腫・腫脹・疼痛を生じる。外麦粒腫は通常2 ~4 日以内に病変は自潰し、排膿すると
疼痛が治まる。
外麦粒腫では10 分間の温湿布を1 日に数回行い、湿布の後にまぶたを軽くマッサージする
とよい。温めることにより麦粒腫に膿がたまり、破裂して膿が排出される過程が促進する。
3)内麦粒腫
内麦粒腫は外麦粒腫に比べて少ない。外麦粒腫は皮膚側へ腫れるが、
内麦粒腫は結膜側へ腫れるのが普通で、瞼を返して診察する必要があ
る。内麦粒腫は眼瞼結膜表面に限局する疼痛・発赤・浮腫が生じる。
内麦粒腫の自潰はまれで、再発が多い。内麦粒腫の治療は抗生物質内
服。内麦粒腫は自然に破れることがめったにないので、自然治癒しな
い場合、切開して膿を出す必要がある。
霞粒腫(さんりゅうしゅ):マイボーム腺の出口が詰まり、分泌物が溜まった状態。麦粒腫と異なり
細菌感染を伴わない。痛みやかゆみはないが、大きくなると異物感が出る。霞粒腫の大部分は、
2 ~ 8 週で排膿または吸収されることが多い。残存する場合には切開する必要がある。