2.膀胱~尿道と睾丸の体壁反応と治療点
膀胱~尿道の自律神経支配は、副交感神経が優位であって、交感神経興奮により誘発された
脊髄神経興奮よりも、副交感神経刺激が治療の主眼におかれる。
1)副交感神経反応と治療点
<中髎穴刺激>
仙髄の排尿中枢はS2~S4にあるので、S3仙骨孔の中髎が刺激点して妥当性
がある。
会陰触刺激
実験的に会陰の触刺激が骨盤神経を興奮させることが観察されている。脊髄を切断し、脳と脊
髄の連絡を断った動物では、会陰部の皮膚刺激が骨神経を反射的に興奮させて膀胱を収縮させることが
知られている(体性ー膀胱促進反射)。小児の便秘の時、親が子供の肛門をコヨリで刺激して、排便を
促す方法が知られているが、これと同様、脊髄損傷患者の排尿調節に重要な役割を果たしうる。
2)陰部神経の反応
泌尿器系に関与する体性神経は陰部神経である。陰部神経には運動神経作用と知覚
神経作用がある。陰部神経はS2~S4の仙骨神経叢から起こり、下直腸神経、会陰
神経、陰茎背神経の3枝に分かれる。
①運動成分
陰部神経が異常興奮すると外尿道括約筋が過緊張し排尿障害になる。逆に陰部神
経が出産などの際に障害を受けると筋の収縮性が低下して尿失禁を生ずる。陰部神経
刺激は排尿や排便のコントロールに適応がある。
②知覚成分
陰茎・亀頭・陰嚢の知覚は陰部神経を介してS2~S4へ入る(前立腺、直腸の
知覚は、副交感性である骨盤神経を介してS2~S4へ行く)。陰部神経は痔疾、膀
胱炎・尿道炎・月経痛などの痛みを伝達する。陰部神経刺針は、これらの鎮痛に適応する。
③下腹部上の刺激穴
中極:恥骨上縁に曲骨をとり、その上1寸。白線上。
大赫:中極の外方5分。腹直筋上。
簡単に陰部神経の終枝である陰茎背神経を刺激できる部位。針響は亀頭に至る(女性では
陰核背神経を刺激して陰核に至る)。
中極・大赫へは、下方に向けて1~1.5寸斜刺、または多壮灸を行なうことが多い。
④陰部神経刺針
上後腸骨棘と座骨結節下端内側を
結ぶ点で、上方より1/2~3/5の領域。
直刺で約5~8㎝の間(2.5~4寸刺入
するので3~5寸針を使用)。
陰部神経に到達すると針響が陰茎
(女性では陰核)に到達することを条
件とする。
針響が下肢にある場合、後大腿皮神
経に接触しているので、刺針転向法に
より内側に刺入し直す。
5)膀胱・尿道疾患の治療点の整理
膀胱~尿道と睾丸の基本針灸治療
骨盤神経(S3)(中髎)
前枝骨盤内臓
L1
(横骨)
陰部神経(S3)
(中極・大赫、陰部神経刺針)