②末梢性嘔吐(末梢からの求心性刺激による)<反射性嘔吐>
a.内耳迷路性:めまい(メニエール病、乗り物酔い)
b.迷走神経性:主として消化管粘膜刺激(食道・胃・腸の各疾患)
c.舌咽神経刺激:舌根、咽頭の機械的刺激
2)悪心嘔吐の針灸治療
悪心嘔吐が単独で出現することは少ない。針灸で取り扱う悪心嘔吐は、末梢神経性嘔吐である消化管病変によるものが多く、腹痛・胃のもたれ・膨満感などとともに出現することが多い。
①内臓体壁反射の治療
治療要領は前記の「胸やけ」と同じ。
②胃直刺
巨闕~中脘にかけて2~3㎝直刺。催吐になるか鎮吐になるかは患者の状態により異なる。郡山七二は、本法を「簡易胃洗浄」と称した。催吐の場合は強刺激する傾向がり、数分後に嘔吐する。胃直刺は内臓体壁反射治療ではなく、内臓に針を入れることを目的とする。実際には胃に響くような感じが得られればよいだろう。
③内関皮内針
内関に置針または皮内針をすると、悪心嘔吐は鎮静化されることが多い。2 0 0 0年
の英国医学会において、嘔気・嘔吐に対して内関穴刺激が有効であるという。ただし麻酔下では効かない。EBM(化学的根拠に基づいた治療)が承認された。
これは29の臨床試験のうち27試験で内関刺激群がプラシーボ群より優位に効果があり、
4試験(比較試験の論文は33集められた)はいずれも麻酔下で行われた試験で、この場合は内関刺激群はプラシーボ群と比べ同等または劣っていたという内容である。なお内関に対する刺激は、指圧・針・電気針であり、プラシーボ群の治療は内関穴に対して、無処置、局所麻酔、偽治療点刺激、偽りの酔い止めバンドなどであった。
内関穴の鎮吐作用は、筆者は横隔膜の過敏性がとれたためだと推測する(詳細は「動
悸息切れ」で説明)が、識者によれば、内関穴刺激時の正中神経刺激のような、太い神経に響かせればよいとする者もいる。
肝炎患者の扱いと慢性肝炎の鍼灸治療
1.鍼灸に来院する肝炎患者
急性肝炎や激症肝炎は症状が激しいので、まず鍼灸には来院しない。一方、肝疾患が
あっても、ウィルスのキャリアや、症状の軽い者は自覚症状に乏しく、肝炎であること
を気づかない者もいる。鍼灸来院するのはB型・C型肝炎が多い(肝炎といえば、通常
ウィルス性肝炎をさす)。アルコール性肝炎、脂肪肝も来院する。
2.肝炎の概略
一回の激しい炎症で、ウィルスが完全に駆逐されるものを急性肝炎とよび、6ヶ月間
以上、ウィルスの破壊と修復が繰り返されるものを慢性肝炎とよぶ。慢性肝炎に占める
B型とC型の比率は1:3~4でありC型が多い。
国内には、B型肝炎者およびそのキャリアとC型肝炎者はあわせて1 5 0万人存在する