老人性難聴は外有毛細胞の崩落による
外有毛細胞は、内有毛細胞に比べて数が多く聴覚に重要な役割を果たしている。外有毛細胞は、音刺激に呼応して1秒間に2万回も細胞膜を伸縮して細胞の運動を引き起こしている(この運動により、ダンス細胞ともよばれる)ので大量のエネルギーを消費している。
血管に異常があるとエネルギー供給量が不足し、外有毛細胞は部分的に徐々に剥がれ落ちる傾向にある。これが老人性難聴である。
5)聴力には、気導聴力と骨導聴力がある。気導の方が感度が高い。
①気導聴力:音の振動は、外耳の空気に伝わり、鼓膜に伝達され、中耳の耳小骨によってさらに内耳の蝸牛に伝えられる。
②骨導聴力:外耳や中耳を経由せず、頭蓋骨の振動を介し、直接内耳の蝸牛に伝達されるもの自分自身の声は、気導聴力と骨導聴力の混合したものを聴いている。
5.平衡覚(前庭感覚)の生理
平衡感覚の受容器は、三つの半規管と耳石器であり、両者を総称して前庭器官とよぶ。
1)耳石器
前庭にある卵形嚢と球形嚢には、それぞれ平衡斑という平衡感覚の受容器がある。この中には感覚毛が生えていて、その上に耳石(炭酸カルシウムの結晶)が乗っている。
体が垂直に立っている時は耳石は移動しないが、身体が傾くと耳石が重力により移動して感覚毛がたわみ、感覚細胞が興奮する。
卵形嚢にある平衡斑は、頭の傾斜や水平方向の直線加速度を検知する。球形嚢にある平衡斑は、頭の傾斜や垂直方向へ直線加速度を検知する。
2)三半規管
半規管の中には、リンパ液が入っており、身体が回転すると半規管内の中のリンパ液も移動する。半規管の根もと部分には、膨大部稜があり、中には感覚毛がある。これを
プクラとよぶ。感覚毛の動きで感覚覚細胞が興奮し、回転感覚が生ずる。つまり、動的平衡(=回転加速度)を検知している。
よく体をぐるぐる回転したあとまっすぐ歩こうとしてもなかなかまっすぐ歩けない事があるのは、急に回転を止めても半規管の中のリンパ液がまだ回転して流れているからである。半規管が三本あるのは、数学にでてくるX軸、Y軸、Z軸と同じで空間を把握しているため。
3)平衡覚の神経路
平衡感覚の受容器から出る神経を前庭神経とよぶ。前庭神経は蝸牛神経と一緒になって内耳神経(第8脳神経)になり、延髄と橋の境から延髄に入り、大部分はここにある前庭神経核に終わるが、一部は小脳・動眼神経核・脊髄・大脳皮質と交通があるので、それらの働きと直接のつながりをもつ。
このため内耳迷路がやられると、運動失調(前庭-脊髄反射)や眼振(前庭-眼反射)、顔面蒼白・発汗・悪心嘔吐(前庭-迷走神経反射)などが現れてく