2)顎関節包の異常知覚
耳鳴は顎関節部への刺激も効果的な筈であり、耳門刺針がそれに該当する。耳鳴に効果があった例があった。聴会からの深刺は無効だった。
深刺する。この状態で、口の開閉の運動針を行なわせる。
3)その他の顎関節運動に関係する筋
①外側翼突筋下頭のコリ:下関深刺を行う。
②内側翼突筋のコリ:理論上は下関からの深刺でも難しく、裏大迎(下顎角の内側縁)から下顎骨内縁へ水平刺を行う。内側翼突筋のコリを緩めるには、ディスポ手袋をはめて、母指を患者の口腔側面壁に入れ、頬部に置いた示指とはさみつけるように指圧する方法がある。
③顎二腹筋のコリ:顎二腹筋後腹は、顎関節の開口筋として作用する。顎二腹筋後腹は、茎状突起に付着し、胸鎖乳突筋の前縁の奥にあるので、天容穴に刺針する。
7.舌の動きにより変化する耳鳴
舌を突き出し、左右に動かすなどすると、音調が変化する場合がある。舌運動は舌下神経が中心となって支配している。とくに舌を前に突き出す運動は、オトガイ舌骨筋の役割なので、舌骨上筋とくに舌根穴刺針(オトガイ舌骨筋への刺針)を行ない、舌の運動をさせるとよい。
舌根穴:舌骨前面中央の上縁に廉泉穴をとり、その1寸前方を取穴。深刺すると舌根部を刺激できる。
8.むち打ち症と耳鳴り
頭頸部への急激な力学的衝撃後に生じた耳鳴りは、針灸で改善の余地がある。その典型にむち打ち症がある。耳鳴りを生じて、せいぜい1~2ヶ月経た状態で来院することが多い。
本病態の治療の基本は、頸椎一行への深刺と、後頸部筋の頭蓋骨付着部への深刺だが、上部頸椎レベルの筋(頭板状筋・頭半棘筋・後頭下筋など)が関与しているので、まずは過緊張筋を見出す必要がある。そのためには、患者自身に頸椎の前後屈・左右回旋・左右側屈や、それらの複合動作を行わせ、動きにくい運動方向を発見することで該当筋を見いだし、2寸#4以上の太さの針で耳鳴りを生じている筋のトリガーに命中させるようにする。したがって座位での治療が適する(置針する必要はない)。トリガーポイントが一カ所だけとは限らないので、一回の治療ですべてに命中ですべてきるとは限らない。むち打ちのパタンとしては頸部交感神経緊張が併発しているタイプもあり、急に顔がのぼせる、動悸がするなどと訴える。頭部外傷後に一側の眼瞼下垂を呈している症例を経験したので、実際には頸部交感神経緊張低下状態なのかもしれない。この型に対しては、星状神経節刺や大椎一行から行う星状神経節に影響を併用する。