3)至陰の施灸の方法
①施灸:椅座位。至陰穴に鉛筆の芯大の灸をする。ジーンと浸み込んでくるような熱
さを伴った響きを求める。だいたい10壮以内にこの感じが得られるようである。
②条件・成功率:施灸すると、胎児が腹の中で動くのを感じることが多く、これが成
功の前兆となる。週2回の施術で3~4回治療までで逆子是正の効果が出る場合
が多い。正常位に回復したかどうかは、産婦人科医の超音波診断による。
7ヵ月頃では7~8割の有効性があるが、臨月では1割程度の成功率になる。
形井は35週までに治療を開始すべきで、36週を越えると困難だと記してい
る。
4)至陰への施灸の作用機序
至陰へ施灸すると、子宮動脈と臍動脈の血管抵抗が低下することが観察される。この現象は、子宮筋の緊張が低下したことを示唆している。つまり、至陰の灸は子宮筋の緊張を緩め、子宮循環が改善することにより、胎児は動くやすくなり(灸治療中に胎動が有意に増加することが確認されている)矯正に至るのではないかと推察される。
5)
①至陰と三陰交の針灸で成功率約9割
妊娠28週~37週の逆子妊婦584例に、至陰の灸または針と、三陰交の針または灸ま
たは灸頭針を行い、成功率89.9%(5 2 5例)だった。24時間以内に半数以上が頭位へ
の回転を認め、施術4回までに約8割の者が成功してた。この成績は従来の骨盤矯
正法と比べ、成功率と安全性からみて驚異的。
②至陰の棒灸をした例での出産頭位率は75.4%(非処置群は47.7%)
妊娠33週で超音波で骨盤位との診断を受けた初産婦260名を対象に、至陰への灸
(棒灸)治療群と無治療群に分けて、両群とも1~2週間の治療後の矯正率を調べた。その結果、35週での矯正成功率は、出産時頭位率は、75.4%対47.7%となり、灸治療の有効性が確認された。
4.分娩陣痛
1)分娩陣痛とは
広義の陣痛は、妊娠、分娩、産褥時にみられる周期的な子宮収縮であり、しばしば痛みを伴う。分娩時にみられるのが狭義の陣痛で、分娩陣痛とよぶ。分娩陣痛は、分娩の進行によって
痛みの種類や部位が変化するのが特徴である。
「イキミ」+「子宮収縮」が、胎児を押し出す力となる
①分娩第1期(開口期)
子宮上部の平滑筋の強い収縮による痛みであり、交感神経性の下腹神経
(Th10~L1)が痛みを伝達する。また胎児が子宮口を押し拡げること
で、脊髄神経性の陰部神経(S2~S4)興奮による痛みも合併する。
※下腹神経:Th10~L1レベルから出て骨盤内臓器を支配する交感神経。