2)肋間神経の走行と神経支配
①第1~第6肋間神経
肋間を胸骨縁に向かって走行し、前胸の肋骨に相当する部の肋間部の筋運動と、深部知覚を支配する。その皮枝は前胸壁皮膚知覚を支配する。皮枝には外側皮枝の外側枝と内側枝、前皮枝の外側枝と内側枝がある。
②第7~第12肋間神経
途中までは肋間部を走行するが、腋窩線あたりから内腹斜筋と腹横筋の間を走行し、腹白線に至る。腹壁筋の運動と深部知覚を支配する。その皮枝は鼡径部を除く腹壁の知覚を支配する。
3)症状
肋間神経が深層から表面に出る部に圧痛がみられ、次の3ヵ所が代表的圧痛点。
①脊柱点:脊柱外方3㎝の処。胸神経後枝が表層に出る部
②側胸点(外側点):前腋窩線上前枝の外側皮枝が表層に出る部
③前胸点(胸骨点):胸骨外方3㎝。前枝の前皮枝が表層に出る部
第6肋間神経以下は腹部肋間神経痛として現れ、前胸点に相当する圧痛点は腹直筋外縁に出現し、
「上腹点」と称する。
4)治療
①傍神経刺
肋間神経に直接刺針して神経の興奮性を緩和させる。または肋間神経周囲に刺針
し、周囲筋の筋緊張を緩和させることで、肋間神経の興奮を緩和させる。
②胸神経刺針
ほとんどの肋間神経痛、胸痛、背部痛、側胸痛などの原因は、椎間孔から肋横突関節付近の脊髄神経の障害による放散痛と考えられる。つまり棘突起下、外方1㎝~2㎝の範囲内になる。針はここに有効深度(3㎝程度)だけ入れればよい。針先は椎間関節、回旋筋、多裂筋付近になる。
4.帯状疱疹後肋間神経痛
1)原因
帯状疱疹は水痘ウィルスを病原体とする感染症。水痘ウィルス感染者の症状(発疹、水疱)消失後、ウィルスが脊髄後根神経節内に達し、潜伏し続ける(免疫力により活動が抑制)。数十年後、免疫力が低下した際に再活性化され、水痘ウィルスは神経節から末梢神経を下行して当該皮膚に水疱を形成する。帯状疱疹は他人への感染はまずないが、水痘に罹患したことのない小児には水痘として伝染する。
2)症状
帯状疱疹(2週間程度で自然治癒する)の治癒後、神経痛様の疼痛で発症。これを
とくに「帯状疱疹後神経痛」とよぶ。この痛みはウィルスが知覚神経を侵襲したこと
で生ずる。痛みの程度は、数か月続く激烈な痛み(焼けるような、刺されるような)
である。肋間神経と三叉神経(1枝領域)に多い。
帯状疱疹発症後、約1ヶ月で帯状疱疹後神経痛に移行。移行する比率は、60才では60%、70才では70%。