4.代表疾患と臨床所見
代表疾患臨床所見
急性虫垂炎①心窩部痛(初期)、次いで右下腹部痛
②発熱、悪心、嘔吐
③圧痛点:マックバーネー点、ランツ点、マンロウ点、キュンメル点
④ブルンベルグ徴候、白血球増多
胆道疾患①心窩部痛、右季肋部痛(疝痛または持続痛)
②右肩・背部に放散痛
③発熱、黄疸、肝腫大など
急性膵炎①心窩部痛・左季肋部の激痛、左肩・背部に放散
②発熱、悪心、嘔吐
③血液・尿検査:アミラーゼ上昇
消化性潰瘍①心窩部痛、とくに十二指腸潰瘍の場合は空腹時痛
②下血、吐血(大量出血の場合)
イレウス①腹部全体の痛み
②悪心、嘔吐、排便と排ガスの停止、糞臭、蠕動不穏
麻痺性イレウスでは蠕動不穏消失する
腎・尿路結石①腰部の激痛(疝痛)および側腹部・下腹部痛
②陰部・鼡径部・大腿内側部への放散痛
③血尿
鍼灸治療の適否と診察手順
1.絶対不適応症の除外
1)急性腹症←即判断
外科的緊急手術が必要な病態ではないか。
(激しい頭痛、悪心嘔吐、ショック症状、発熱など)
急性腹症を疑うこと自体は難しくない。的確な診断、開腹手術の適否は難しいが、医師が判断すべき仕事である。鍼灸師の役割は、すみやかに医療機関へ転送することである。
2)悪性腫瘍←数回治療後に判断
慢性持続性や反復性の疼痛では悪性腫瘍を考慮。
疑う条件:半年~1年前など比較的最近に発症、段階的に悪化
体重減少(1ヵ月で3キロ、3ヵ月で5キロ以上)
2.体壁疾患と内臓疾患の鑑別
体壁疾患内臓疾患心因性疾患
痛む部を自分の指で示せる できる できない
体動で痛みが変化するか 変化する 変化せず
3.炎症の程度をみる
筋性防衛(デファンス)、反跳痛(ブルンベルグ)
(+):内臓の腹膜痛→早急に転送
(±):内臓の軽度腹膜痛。経過をみて転送
(-):内臓痛または関連痛
慢性腹痛(独歩行来院)の鑑別ツリー
バイタルサイン異常→専門医へ
(体温、血圧、脈拍数)
腹膜刺激症状(+) →専門医へ
(筋性防衛、ブルンベルグ徴候)
癌診断基準に合致→専門医へ
(1ヶ月で3㎏以上、3ヶ月で5㎏以上の体重減少)
痛む部を自分の指頭で示せる
Y 痛みは体動で変化する。N体壁痛鍼灸適応な内臓症(腹膜痛ではないこと)
限局性の強い痛み→関連痛
漠然とした痛み→内臓痛
内臓体壁反射と鍼灸治療パターン
1.内臓-体壁反射
臓器に異常があると、その臓器を支配している求心性交感神経が興奮して交感神経節に入り、次いで交通枝を介して脊髄に入る。すると遠心性交感神経が興奮し、体壁に交感神経性反応を呈する。とともに、同一脊髄分節にある脊髄神経も興奮して、体壁に体性神経性反応を呈する。
脳(痛みを認識)