1)督脈基本5穴(身柱、神道、霊台、至陽、筋縮)への灸
心臓神経症者は上記5穴に反応が出ることが多い。同時に同じ高さの膀胱経や、四
肢にも反応が出るが、督脈上へ15~20壮施灸することで、これらの反応点も消失
し症状も消失することが多い。
2)第5、6胸椎夾脊穴への針
①ある心臓神経症患者の第5、6胸椎棘突起に過敏点を認め、X線撮影で同部位での
椎間関節可動性が制限されていることが認められた。そこで第5、6胸椎夾脊穴に
刺針(1番針で刺針雀啄後1分間置針)したところ、1回の治療で9年間感じてい
た胸痛、過敏点ともに消失し可動性も回復した。
②さらに17名の心臓神経症患者に同方法(ただし雀啄後2分置針で週1回施術で計3
回)にて追試を試みた。その結果、過敏点は47%で消失、胸痛は1回の治療で71%
の著効を得た。胸痛以外にも、呼吸困難感、肩凝り、背部痛、胸部圧迫感、動悸に
対しては3回治療で50%以上の症例で著効をみた。ただし全身倦怠感やふらつきに
関しては有効度が低かった。
胸壁性胸痛の鍼灸治療
1.胸壁性の胸痛の分類
皮膚、深部痛覚(筋々膜、腱、骨膜)が関係。体性神経が痛みを伝達する。これを
偽性狭心症あるいは疑似狭心症とよぶ。
胸痛の90%は虚血性心疾患ではなく、胸壁の問題である。脂質、血圧、糖尿病の異常がない場
合には、冠状動脈疾患の可能性はほとんどない。(バーナードイン「治せる医師治せない医師」)
筋々膜痛:大胸筋緊張など
胸神経痛後枝痛:胸椎椎間関節症
(T1~T3)
前枝痛:肋間神経痛など
骨膜痛:肋軟骨炎(=ティーツェ病)
肋骨骨折
2.頚胸椎移行部を中心とした脊柱変化
胸部筋のコリや、胸神経後・前枝の運動神経線維の緊張でも、狭心症とほぼ同様の症
状を訴えることがある。最も多いのはT4~T7胸椎分節から生ずる。なお下部頚椎~
頚胸椎移行部が最も多いとする見解もある。
症状は、まったく狭心症と同じ(胸がしめつけられ息がしづらい、動悸がする、背中
が痛い、胸が痛い、心臓が苦しい)であって、この場合であっても、ニトロは体壁筋の
血行改善するためか有効になる。この治療には、撮痛帯から内上方に位置する夾脊刺針で、
胸痛消失することが多い。
3.肋間神経痛
1)原因
特発性は比較的若い女性に多く、左側の第5~第9肋間領域に多い。ただし特発性
は少なく大部分は症候性である。症候性の原疾患には糖尿病、脊椎疾患、帯状疱疹、
単純性疱疹、胸部内臓疾患(胸膜炎、自然気胸)などがある。