4)手根管症候群の鍼灸治療
①労宮(移動穴)
手掌中央に労宮(心包)をとり、手関節掌側横紋の中央の大陵穴との中点を取穴、直刺刺針する。手根管に対する直接刺針となる。母指球の筋群が萎縮していない初期段階で
は母指球筋を刺激する。魚際(肺):第1中手骨底と大菱形骨との間
短母指外転筋(正中神経支配)に刺入。重症者は、靱帯切開手術。
6.ギヨン管症候群(尺骨神経管症候群)
1)原因:尺骨神経が、豆状骨と有鉤骨との間の尺骨神経管(Guyon管)内で絞扼された状態。稀な疾患。
ギヨン管を構成するもの:豆状骨 有鉤骨
2)症状:小指球部の萎縮、手の第4~5指の知覚異常
フローマン徴候(+)、チネルサイン(+)
3)治療:神門移動穴(豆状骨の遠位側縁)から直刺。
7.筋皮神経麻痺
1)筋皮神経の走行と機能
①筋皮神経は腕神経叢から出る混合性の神経。
②筋枝:上腕屈筋群(烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕筋)に分布。
筋皮神経の支配筋:烏口 上腕二頭筋 上腕筋 筋皮神経
③皮枝:
外側前腕皮神経として前腕橈側(肺・大腸経)に分布。
2)原因:
外傷や手術後遺症。
神経絞扼障害で起こることは少ない。
3)症状:運動→肘の屈曲困難
知覚→前腕橈側の知覚低下
4)治療点:天府(腋窩横紋前端の下3寸)、
侠白(腋窩横紋前端の下4寸)、上腕二頭筋腱上、烏口突起直下で上腕二頭筋短頭の付着部
筋皮神経障害を疑う条件:愁訴は肘痛で、上腕二頭筋をつまんだ際に、強い圧痛がある場合(前腕の肺・大腸経に撮痛のみられることもある)。→天鼎刺針
8.腋窩神経麻痺
1)腋窩神経の走行と機能
腋窩神経は腕神経叢から出る混合性の神経。筋枝は三角筋、小円筋に分布し、皮枝は上腕上部の外側に分布する。
腋窩神経支配の筋:腋窩 小円筋 三角筋
2)原因:肩関節下方脱臼が多い。神経絞扼障害で生ずることは少ない。
3)症状:三角筋麻痺による肩関節外転障害
9.遅発性尺骨神経麻痺(肘部管症候群)
1)原因:幼少期の肘骨折
2)病態:肘骨折治癒後、成長するにつれて外反肘が増強し、尺骨神経溝(=小海部分)で尺骨神経が絞扼されて麻痺する。
3)症状・所見:第4第5指の知覚低下やピリピリする痛みを訴
え、進行するとつまむ力(母指内転筋力)が低下し、第4第5指の変形が生ずる。
チネル徴候(+):肘部管内で圧迫された尺骨神経を軽く叩くと、第4第5指へ痛み放散。
4)局所治療:小海(小腸):仰臥位、肘屈曲位にて刺針。