3.胸椎夾脊刺針の適応
一見すると内臓症状のようであっても、実際には脊柱異常が関与した脊髄神経症状で
ある場合を、偽内臓異常とよぶ。この場合、脊髄神経に対する治療が、対症治療ではな
く、原因治療に近くなる(原因は変形性脊椎症や胸椎の椎間関節症)。
このタイプは鍼灸の最適応の病態であって、背部一行刺針で速効することが多い。
4.胃倉刺針とその適応
痛みが強い場合や、起立筋の緊張が非常に強い場合、伏臥位にて背部2行線上(棘突起間の外方1.5寸)から刺針施灸しても、治療効果が乏しい場合がある。このような場合、側臥位にて胃倉から深刺すると治療効果が増大する。胆石疝痛に用いると、疼痛が頓挫できることが多い。
すなわち通常治療では肋間神経や胸神経後枝が深層から浅層に出てくる部を治療点とするのであるが、胃倉は肋間神経支配である下後鋸筋を刺激して針響を与えるという意味がある。
胃倉位置:T h12棘突起下外方3寸で、腰方形筋が第12浮肋骨に付着している部。
刺針:側臥位で脊髄方向に深刺し、起立筋の浅層にある下後鋸筋に刺入。雀啄する。
横隔神経と体壁反応
1.横隔神経反射
横膈膜隣接臓器(肺下葉、心臓、胃、肝、膵臓など)に異常が起こると、内臓の異常
反応が横隔膜に波及する。内臓知覚は元来鈍感であるが、横隔神経は脊髄神経なので敏
感である。患者は本来の内臓症状よりも横隔膜反応を中心に愁訴を訴えることが多い。
頸肩筋の緊張や、横隔膜付着部周囲の背筋と腹筋緊張を緩めることが内臓治療につながる。
1)横隔膜中心部
C3~C4脊髄神経支配。このデルマトームやミオトームは頚肩部を支配し、同部
の皮膚過敏と筋コリをもたらす。(C3:頚部C4:肩甲上部)
2)横隔膜辺縁部
横隔膜付着部周囲の反応として、T h5~T h12デルマトーム・ミオトーム反応。
体幹側面(側胸部や側腹部)や起肋部や中背部に痛みやコリが現れる。
2.横隔神経刺激の針法
横隔膜中心部を刺激するには、天窓から頸神経叢に刺針し、パルス通電をするとよい。
横隔膜辺縁部を刺激するには、Th5~Th12肋間神経を刺激する。下図はTh6外方1寸5分の督兪穴刺針時の針響パターンである。
夾脊刺針とは以下のようであり、独特な肢位と呼吸法を指示することで、内
臓に針響を与えたらしい。
膈兪一行
①体位
正座させ、両手を膝上に置き、上体に力を入れず、まっすぐ前方を見る姿勢にする。静かに深く呼吸させる。
②位置
Th7棘突起下(左右肩甲骨下角を結ぶ線上)で、棘突起から外方1寸内外の反応点。
③刺針
2番~5番の針で1寸ほど直刺する。横隔膜に針を響きをもっていく。手に渋りを感じ、針が重くなれば感応あることを示す。胃に響きが至る。響きが至れば弾振後、抜針する。
④適応:横隔膜症状、横隔膜痙攣