2)椎傍神経節と脊髄神経の反応パターン
椎傍神経節とは、T1~L3椎体の両傍に
ある交感神経節の別称をいう。椎傍神経節の体壁反応は、内臓所属の交感神経性デルマトーム上の、皮膚のざらつき、冷え、立毛、やつれなどの反応として出現する。
これらの反応は診察する上で把握しづらいが、一定以上の強い興奮であれば交通枝を介して脊髄神経を興奮させ、体性神経反応を呈するようになる。
この時の体壁反応とは、圧痛・硬結・撮痛などであって、自覚痛ではない。ただし閾値以上の強い体性神経興奮であれば自覚痛を生じ、これを関連痛とよぶ。
①脊髄神経前枝の反応
腹痛の場合、腹部体表の皮膚と筋を知覚運動両面で支配するのは、胸神経前枝すなわち肋間神経が中心で、鼡径部が腰神経叢の枝である腸骨下腹神経が、陰部が腰神経叢の枝である腸骨鼡径神経が支配しているにすぎない。
肋間神経の走行上で、臨床上の圧痛点は、神経が深部から浅層へと出てくる部や神経分岐部に出現しやすいことが知られている。腹部では、前皮枝が浅層に出てくる部である腹直筋上に、前胸部では胸骨外縁に反応が現れやすい。外側皮枝の反応の出現することは少ない
②脊髄神経後枝の反応パターン
脊髄神経後枝は、前枝と同じ高さを起点として背腰部を斜め外下方に走行している。前述したように前枝筋は腹直筋上に圧痛硬結が出やすいが、後枝は深層から浅層に出てくる部である起立筋上に圧痛硬結が出現しやすいことが知られる。前枝と後枝の反応は、基本的には体幹前面と背面にペアとなって出現し、前枝支配筋(腹直筋)の痛み凝りが出現するのと同時に、後枝支配筋(起立筋)にも痛みコリが出現する。
臓器脊髄神経支配前枝反応後枝反応
胃十二指腸・肝胆・膵・脾Th6~Th9 上腹部腹直筋中背部起立筋
小腸・虫垂と左結腸彎曲部までの大腸Th10~Th12 中~下腹部腹直筋下背部起立筋
膀胱・生殖器・左結腸以下の大腸L1~L2 鼡径部腹直筋上腰部起立筋
既知の反応点
a.ボアス圧痛点
第10~12胸椎棘突起の外側3㎝。経穴では、胆兪・脾兪・胃兪に相当する。
左側は胃潰瘍、右側は胆石症の反応(十二指腸潰瘍、胃癌、腎疾患、膵疾患でも圧
痛出現)。胃潰瘍は左側に限らず右側に現れることもある)。
b.胃の六ツ灸
両側の膈兪・肝兪・脾兪の計6点のことをいう。古来から胃を中心とした上部消化器疾患に用いられてきた灸点。